「ノート」が映し出す話し手と聞き手のズレ
セールスパーソンの話を聞く、社内報の取材を受ける、大学の後輩に就職のアドバイスを求められる。そんな状況で、ノートを取る聞き手に話したことはありますか?逆に、ノートを取りながら話を聞いたことはありますか?
おそらくほとんどの方は両方のご経験があり、そして(インタビューのような)話し手と聞き手がはっきりしている会話に「ノート」を介在させることの難しさを感じられているのではないでしょうか。
話し手としては、聞き手のノートが見えないと落ち着かない気分になります。そのノートにはおそらく相手が関心を持った言葉が書かれているでしょうから、それを見せてくれれば、相応の話をしてあげられるのに、聞き手は「どうぞ好きにお話しください」などと言ってきたりします。
逆に聞き手からすると、話し手にノートを覗き込まれたり指で指されたりすることに何となく抵抗を感じます。特に、聞きながら連想が膨らんでちょっとメモしておいた言葉や、相手の話に疑問があって付けてみた「?」マークなどに反応されたりすると、なおさらです。
自分の経験を振り返ってみると、話しているときには
「自分の意図が間違いなく伝わっているか、確認しながら会話を進めたい」
と思っているのに、聞いているときには
「あなたは素材だけを提供してくれればよい。解釈はこちらの仕事だ」
という感情が、意識のどこかにあるような気がします。
話を引き出すノート術
先日、年若の友人と「ノート」の話になりました。彼はスーパーセールスマンであり、トークもとても上手なのですが、それ以上に聞き上手だと感じていました。
「聞き上手」というと温厚で包容力の高そうなカウンセラータイプがイメージされますが、彼はノリノリタイプという感じ。話しているとどんどん合いの手が入ってきて、イヤでも話が盛り上がっていきます。
そんな彼が教えてくれたヒアリングのテクニックの一つに、ノートを効果的に使ったものがありました。わたしが聞いて理解したことをご紹介しましょう。やり方はいたってシンプルです。
話を聞きながら、ノートを取ります。
ノートの方はあまり見ずに、キーワードを大書していきます。
1ページ10行くらいで、どんどん書きます。
ここで重要なのは、書いた字が話し手から見えていること。
「これはこの方の決まり文句だな」と思った言葉は、
ぐるぐるとマルで囲みます。
人の話というのはたいがい循環しますから、
「なるほど、それが先ほどの○○ということですね!」
などと相づちを打ってみます。
この方法は非常に効果的で、彼はしばしばこれだけでセールスを成功させてしまいます。
自分の中によい聞き手を育てる
彼はカウンセラーでもコーチでもないので、傾聴とかラポールとかミラーリングとかいう用語は使いませんが、いわゆる「聞く技術」のエッセンスを体で学んでいます。
要するに彼は、自分のためにノートを取っているのではなく、
話し手のために、話し手の「思考の鏡」の役をしてあげているのです。
よい聞き手になるよりもさらに難しいのが、
自分の中によい聞き手を育てること。
このたびリリースする「ココロミ」というサービスも、
第一には面白そうだからやってみるのですが、
ちょっと真面目な目的としては、ゆるいテーマ別Blogのようなものが
ユニークな「聞き手」になってくれるのではないかという期待もあります。