2025年の世界を予測している米国のシンクタンクのサイトによると、世界を動かしていく7つの革命(人口、資源…)の一つとして「知識」、具体的には「情報と知識の伝播の速さがもたらすもの」が挙げられていました。
そのページのトリビアを紹介しましょう。
・マサチューセッツ工科大学は講義資料を無料で開放し始めています。
・現在でも既に130カ国で55,000コースの遠隔教育プログラムが存在しています。
・適応性が鍵になります;将来の労働者は平均で6回のキャリアチェンジを経験することになります。
この最後の「6回のキャリアチェンジ」という言葉にびっくりしました。”Career Change”といえば普通は単なる転職や異動(Job Change)でなく、自分の専門分野を変えるほどの大きな変化を指します。
6回という具体的な数字が出ているからには、何らかの調査が背景にありそうです。そう考えて調べているうちに、この頻繁なキャリアチェンジは現在米国で起こりつつある潮流であることが分かってきました。
例えば、「ギアを上げて:キャリアチェンジへの新しいアプローチ」と題された記事を読んでみましょう:
『米国労働省労働統計局の統計によれば、平均的な労働者は職業人生の中で12〜15回の”Job Change”と4〜6回の”Career Change”を経験している。”Change”の多い人は求職企業から敬遠されがちだったが、今日の雇用市場では柔軟性の指標として評価されつつある。』
キャリア・チェンジすなわち転職ではありません。同じ記事には
『カナダ銀行の調査によれば、企業は1990年代にはキャリアパスや役割の変化に適応できる人材を求めるようになった』
とあり、一つの組織に勤めていてもキャリアチェンジの機会が増えるであろうことが窺えます。
また、転職回数の少ない人のほうが多く退職金を得ているという調査もあるそうですから、一方的に転職万歳とはいきません。
無原則にぽんぽん転職すること(Job-Hopping)にも、キャリア・チェンジを恐れてじっとしていることにも、それぞれリスクはあります。記事はそれらに触れた上で、「バランスが鍵」だと無難にまとめています。
ここで最初のトピックに立ち戻って、「情報と知識の伝播の速さがもたらすもの」を整理してみると、
(技術革新を前提として)
→「情報と知識の伝播のスピードアップ」
→「(企業にとって)国際的な競争の激化」
→「(個人にとって)労働環境の大きな変化」
ということになります。労働環境の変化といっても、具体的には、レイオフやスキルの陳腐化といったネガティブなものも、新しい職種や仕事の誕生といったポジティブなものも考えられます。
頻繁な転職の制度上の損得とか、日米の労働市場・文化の違いとか、いろいろ突っ込みどころもありますが、上記のような大きな流れを考えれば、キャリア・チェンジの機会(あるいは望まなくてもキャリア・チェンジを求められること)は増えていくといっていいでしょう。
きっかけが自発的なものになるのか降ってわいたものになるのか分かりませんが、これからの数十年の職業人生において、わたし達は複数回のキャリア・チェンジを経験することになりそうです。
「その機会」を掴まえて何をやりたいか?考えておいて損はなさそうですね。