『心に成功の炎を』という本を先日読了したばかりです。これは中村天風という大変高名な方(といってもわたしは最近まで知らなかったのですが)の講演録です。
その中に、「勘をよくする」という章がありました。
勘なんてそもそもあるかないか分からないものを良くするなどと、高名な先生の言うことは一味違うと思いながら、ちょっと斜に構えて読んでいましたが、これが面白い話でした。今日はその話を書きます。
勘をよくするとは官能の啓発、「五官の感覚の機能を正確、優秀にすること」である、そうです。
第六感たる「勘」をよくするために、なぜ五感を鍛えるのか。
我々の精神生命は、外界に存在するいろいろの事象、事物の印象というものが栄養物になっている。もっとわかりやすくいえば、目や鼻や耳や、あるいは下や皮膚にもつ感覚作用が、外界の事物、事象のすべての印象を精神生命の中に受け入れてる口になっているんです。
精神生命というのは、いわゆる命のことだと理解しました。五感をフルに活かして外界の情報を取り入れて、初めて「勘」がはたらくという理屈はなんとなく納得できます。
具体的に触覚、視覚、聴覚の鍛え方まで書いてあるのですがそれは割愛します。エッセンスだけ引用すると、こういうことです。
では、どうすれば感覚器官を正確に使用する習性を現実につけられるか。
まず第一に、諸事万事に応接するときに、「はっきりした気持ちでやる」ということなんだ。これは「有意注意力」を集中するという意味なんだが、これは、精神統一の習得には欠かせない条件だったね。
何事もはっきりした気持ちでやる。好きなことをやるときと同じように気をこめてやる。そうすると『いったん心の前におかれた事物のいっさいをその心に深刻に印象づけて、細大もらさず心の中の記憶の倉庫内にいれちまう』んだそうです。
# いわゆるポジティブ・シンキングだなと思われた方、私もそう思いました(この本には「絶対積極」という章もあります)。
さて、勘をよくするのは「認識力を養成する」鍛錬の一部なんですが、認識力が養成されるとどうなるか。天風先生の境地に達すると『どんなむずかしい人生の相談をしにこられても、右から左に、イエス、ノーを言います』というくらい、他人のことが分かってしまうようですが、すくなくとも起-動線的文脈においては、自分の意志決定のスピードを上げられることでしょう。スピードを上げるというか、時間が掛からないということになります。勘で決めていいんですから。
ほんとかなあ、と思っているでしょう。わたしも大いに思っています(笑)。まずは「何事もはっきりした気持ちでやる」ことによって勘がよくなるかどうか、試してみたいと思いました。