ミニレビュー
引用:
いまこの瞬間のなかにすべてがある。少なくとも、大切なものは全部でそろっている。
人生の意味も、美も生命も愛も永遠も、なんなら神さえも。
だから瞬間を生きよう、先のことを想わず、今ここのかがやきのなかにいよう。この本で明らかにしたいのは、たったこれだけのことです。
(プロローグより)
こう始まる本書は、哲学・思想、さらに文学や芸術の領域をカバーしつつ、上記のテーマを追いかけていきます。
本書で、われわれの視点を未来に向かわせる圧力のようなものに名前を付けた人がいることを知りました。
『(略)近現代の、社会的で歴史的な構造も、深く影を落としていましょう。その構造とは、近代特有の「先へ前へ競わせ駆り立てる仕組み」のことです。フランスの社会思想家P・ヴィリリオは、この根本的な仕組みのことをドロモロジーと名づけ、鋭い分析をしています。』
副題の「〈今ここ〉に佇む技法」については、章末のコラムで1〜2頁ずつ紹介されるにとどまっているのですが、興味があったので要約を付けてリスト化してみました。
- [技法0]苦行の一分間 一分間、任意の対象に意識を向け続ける。今この瞬間に立ち会うことの難しさを実感する。
- [技法1]魔法のトンネル 芸術(の鑑賞あるいは創作)に没頭する。芸術は瞬間を生きるための魔法のトンネルである。
- [技法2]つねる(痛みの現場) つねる。痛みは今ここでしか発現しないため、即座に今この瞬間に戻れる。
- [技法3]まずは沈め バタフライでは、まず思いきり沈む。すると自然に浮き上がる。この世の泳ぎ方も同じ。
- [技法4]現在地を生きる 刻一刻の〈今ここ〉を大事に生きる。ゆっくり行く者が、遠くへ行く。
- [技法5]サティする 一瞬一瞬の動作や心の揺れ動きに気づいて確認する。意識が〈今ここ〉にリンクしていく。
- [技法6]超スロー歩行 1歩15秒ほどかけて空間を泳ぐように歩く。あっと言う間に瞬間没頭状態に入る。
- [技法7]なにもしない 何もせず、ただ在る。それが瞬間を生きる技法の原型である「禅」。
- [技法8]吸って吐く ゆっくり大きな呼吸を3つする。今この瞬間だけが、浮き彫りになってくる。
〈今ここ〉に佇む技法 – *ListFreak