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トヨタの思考習慣―世界一成功するシンプルな法則


ミニレビュー

トヨタの強さを「思考習慣」という切り口で分析してみせています。トヨタの研究本というよりは、どちらかといえば著者(日比野 省三氏)の「ブレイクスルー思考」の解説をトヨタという器の上で行った本という印象を受けました。わたしは以前に『新・ブレイクスルー思考―ニュー・コンセプトを創造する7つの原則』を読んで、とてもよい方法論だと思っていましたので、違和感なく読めました。

印象的だったのは「絶対ベンチマーク」という言葉。ベンチマークというと、業界トップの企業と自社を比較することを(暗黙のうちに)指します。競合との差を測り、その差を埋める(あるいは差を付ける)ことを目標とします。しかし「絶対」ベンチマークという言葉が意味するところは、他社や自社の過去の数字との比較ではなく、理想の姿あるいは理論値との比較をしようということ。生産ラインの切り換え(段取り)時間の平均がこれまで3時間だったとすれば、これを「2時間にしよう」ではなく、あくまで「ゼロをめざそう」ということです。こういうベンチマークの設定は、理論的には可能であっても、実際にやっている例はトヨタ以外には知りません。

われわれの生活に置き換えてみると、難しさが実感できます。「世間並みの暮らしがしたい」も「王侯貴族のような暮らしがしたい」も、相対ベンチマークです。他人と比較することなく「ありたい自分」を定義できる人のみが、ゆるがぬ「絶対ベンチマーク」を持つことができるということです。

引用:

はじめに――トヨタの「隠し味」の秘密
序章 思考習慣とは何か?
第1章 思考習慣1「先例を追わない」
第2章 思考習慣2「本質と根本に戻って考える」
第3章 思考習慣3「変わり続けるための究極思考を」
第4章 思考習慣4「独自のしくみを作る」
第5章 思考習慣5「情報収集は現地・現物・現場で」
第6章 思考習慣6「人間性を重視する」
第7章 思考習慣7「変わり続ける文化を作る」
第8章 トヨタの思考習慣とブレイクスルー思考
終章 超トップランナーへの道
あとがき――伝承可能になった「七つの思考習慣」