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ローマ人の物語 (1) ― ローマは一日にして成らず


ミニレビュー

15年にわたって書き続けられているベストセラーシリーズが今年終わると聞いて、遅まきながら追いかけています。

意志決定という個人的なテーマに照らしてもっとも感銘を受けたのは、ローマではなく、紀元前460〜430年までアテネを治めたペリクレスの演説です。(1行目の「彼ら」というのは競争相手のスパルタ人を暗示しているとのこと)

引用:

 

われわれは、試練に対するにも、彼らのように非人間的な厳しい訓練の末の予定された結果として、対するのではない。われわれの一人一人がもつ能力を基とした、決断力で対する。われわれが発揮する勇気は、慣習に縛られ法によって定められたから生れるのではなく、アテネ市民一人一人が日々の生活をおくるうえでもっている、各自の行動原則から生れる。 ……(中略)……
 われわれは、美を愛する。だが、節度をもって。われわれは、知を尊ぶ。しかし、溺れることなしに。われわれは、富を追求する。だがこれも、可能性を保持するためであって、愚かにも自慢するためではない。アテネでは、貧しいことは恥ではない。だが、貧しさから脱出しようと努めないことは、恥とされる。
 われわれは、私的な利益を尊重するが、それは公的利益への関心を高めるためである。なぜなら、私益追求を目的として行われた事業で発揮された能力は、公的な事業でも応用可能であると思っているからだ。ここアテネでは、政治に無関心な市民は静かさを愛するものとは思われず、市民としての意味をもたない人間とされるのである。(p137)

これを読んで読者が感じるであろうことを著者が先回りして書いているので、それも引用します。

引用:

 

 まことに格調の高い、異論など差しはさみようもない正論である。自由主義者のバイブルにしてもよいくらいだ。二千五百年を経て人類は進歩しているはずであるのに、このペリクレスのような、簡潔で明快で品位にあふれた演説ができる指導者を、二十世紀末に生きるわれわれは、はたしてもっているであろうか。(p138)