ミニレビュー
とても分かりやすい、コミュニケーション力の高い本
タイトルを見て、「私のコミュニケーション能力は『治療』が必要なほどではないかな」と思われたかもしれません。
しかし。無くて七癖、自覚症状が無いのがコミュニケーション疾患の怖いところ。日本人の三大生活習慣病は、がん、心疾患(心筋梗塞など)、脳血管疾患(脳卒中など)だそうですが、この本が取り上げるのはさしずめ「五大コミュニケーション疾患」。すなわち
・伝えたつもりがひとりよがり病
・オレオレ症候群
・会話マンネリ化ウイルス
・ネガティブな思い込みシンドローム
・自己主張不全症候群
の5つです。
同名のワークショップを書籍化したこの本は、まず5つの疾患に関する「健康診断」(Yes/Noクイズ)からスタートします。そして5つの疾患それぞれについて章が割かれ、いや診療室が開かれ、症例と処方箋とが5つずつ、テンポ良く供給されます。診療室の中にはマンガありコラム(サプリメント)あり、ドクターの叫びありナースの励ましあり…。にぎやかに、かつ分かりやすくコミュニケーション力の改善に取り組むことができます。読み手を非常に意識して構成されています。
読み手に対する意識の高さは、「コーチング」に対する著者のポジションにも表れています。著者はベストコーチ.jpというコーチとクライアントのマッチングサイトを運営していて、この本でもコーチングの考え方をベースにしています。しかしツールやスキルありきではなく、あくまでも読み手の問題意識(コミュニケーションの改善)から発想しています。だから、本の中で紹介されるコーチングテクニックが「生きている」、つまり文脈にしっかり収まっている、と感じます。(このあたりの著者の思いは、冒頭の「検査受付」に書かれています)。
羊の皮を被った狼
帯にはばっちりドクターとナースの著者近影、1,470円ソフトカバーのお手頃価格、そして200ページ弱の読みやすい構成。いかにも読みやすそうで、実際読みやすいのですが、内容も構成も論理的。言うなれば、羊の皮を被った狼。ここまで絞り込むまでには相当苦労されたことでしょう。
実は著者の須子さんと松村さんとは、(多分)お二人が出会う前に別々にご縁をいただいています。須子さんは起-動線のセミナーに遊びに来てくださいました。松村さんは共通の友人を介して世話人の自宅でお目にかかりました。
お二方ともそれぞれパワフルな方だなあと思っていたら、いつの間にかコンビで、やはり世話人がお手伝いをさせていただいていたビジネスプランコンテストに登場されてびっくり、でした。