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はじめの一歩を踏み出そう―成功する人たちの起業術


ミニレビュー

起業マニュアルの古典

たしか『金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント』あたりで紹介されていたスモールビジネスの起業マニュアルです。『成功する「自分会社」のつくり方―夢を実現するための7つのステップ』というタイトルで訳されていたのですが絶版で手に入りませんでした。この度原著が加筆・再出版となったのを機に日本でも復刊の運びとなったようです。

まず起業を考えるような人は、自らの中に三つの人格があることを認めなければなりません。それは:

・起業家 ― 変化を好む理想主義者
・マネジャー ― 管理が得意な現実主義者
・職人 ― 手に職をもった個人主義者

著者によると、起業する人はたいがい(一時的に)起業熱にとりつかれた「職人」です。
職人であるがゆえに個人のサイズを超えて事業を成長させることには興味が無い。けれど事業が大きくなると好きでないこともいろいろしなければならず、情熱も醒めていくというのが著者の描く「一般的な」構図のようです。

自分がいなくてもうまくいくか?

この本の前提は「事業とは成長するべき」であるということ。

引用:

 

事業とは成長するべきであるという考えにしたがうなら、すべての事業は、いずれは「手ごろなサイズ」を超えて成長する運命にある。

そこを見据えて「事業が大きくなってもうまくいく仕組み」、さらには「自分がいなくてもうまくいく仕組み」を作ることがキーポイントになっています。

引用:

 

私は、起業することの最終的な目標は、「会社を売却する」ことだと考えている。会社を立ち上げ、成功させ、売却することで十分な報酬を得るのである。

この辺りに共感できるかどうかで、読み手にとってのこの本の価値は決まってきます。

たとえば「職人」タイプのスモールビジネス(『金持ち父さん…』でいうところのSクワドラント)の典型は、弁護士や税理士、コンサルタントなど専門性の高い職業での独立だと思いますが、こういう専門サービス業は基本的に「儲かれば儲かるほど忙しくなる」性質がありますね。そして仕事は属人的であり、他の誰かが代替することは難しい。

『金持ち父さん…』やこの本は必ずしも上記のような自営業を否定するものではありません。ただ、『あなたの事業は、あなたの人生ではない』ということをよく踏まえて事業ドメインを定めるべきだと言っています。

引用:

 

 事業の目標とは、あなたが何に最も価値を置き、どんな人生を望んでいるのか?に対する答えとなるものである。
(略)
 簡単なことだろうか?いや、簡単なことではない。
 しかし、まずは人生の目標を決めなければならない。人生の目標が定まらないまま、どうして事業の目標を決めることができるだろうか?どうして達成の度合いを測ることができるだろうか?

「あくまでも自分がやる」ことに喜びを見出し続けられるか。もし本当に目指したいことが「自分のやり方が広くあまねく使われる」ことであって、必ずしも自分がやらなくてもいいのであれば、違ったやり方があります。

事業と人生の関わりをしっかり考えよう

この本では、上で書いたように「会社を売却する」ことが起業の目標であるという前提に立っています。一方、例えば先日書評を書いた『ビーンズ!』では、敢えて拡張をしなかったコーヒーショップの実話を基に、(この本で言うところの)職人的な考え方をよしとしています。

対照的なこの2冊、面白いことに共通して「目的を明確にせよ」と言っています。

『ビーンズ!』は、「目的を明確にしなさい。目的に沿っている限りにおいては、拡張の必要はありませんよ」と説きます。
一方こちらの本は「目的を明確にしなさい。生涯一職人でいたいとは、まさか思っていませんよね?」という感じです。

どちらが正しいというわけでは決してないと思います。ただ、わたしの経験から「どちらのメッセージがより多くの人に当てはまるか」と考えてみると、こちらの本かなと思います。

フランチャイズに学べ

売却が目的であっても、一生背負っていくつもりであっても、「事業をパッケージ化する」という発想はとっても重要ですよね。まず仕事の精度が上がりますし、もし共感者が現れて仕事を広げたくなった場合にも素早く対応できます。