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会社はこれからどうなるのか


ミニレビュー

□ カイシャのこと、知ってますか
働く会社を変えれば転職、自分で会社を興せば起業。われわれの職業人としての自己実現は「会社」を通じてなされるといっていいでしょう。ではその舞台たる会社とはいったい何か―。

この本は物理の公式を組み立てるように、原理原則からひとつずつ、会社とは、日本型資本主義とは、そしてわれわれが突入しているポスト産業資本主義とは何か、じれったいほど丁寧に説明してくれます。330ページほどの本ですが、自分戦略を考えるヒントが詰まっているのは最後の60ページ。これからの会社のあり方と、会社で働くということについて著者なりの見通しを述べている部分です。

まず、これからの企業の競争力は資本の多寡や設備の軽重ではなく「ヒト」、個人個人のタレントや、その産み出すアイディアになってくると指摘しています。『(略)ポスト産業資本主義的企業にとって、いかにヤル気を起こさせる人間組織をデザインするかが、その命運を決してしまうことになったのです。』
次に、自ら差異(これが競争力の源泉です)を産み出せる個人の起業が容易になっていくことを指摘しています。金融革命によって資金調達が、IT革命によって情報流通が、それぞれ容易になったことを背景として挙げていますが、同時にこんな指摘も。『だが、いくらこのような外的条件が整ったとしても、会社をおこす意思決定をするのは究極的には個々の人間です。』

日本はこれからどうなるのか。そのなかで自分はどう生きるのか。そんな骨太なテーマを、いちど時間を取ってじっくり考えてみたいと思わせてくれた一冊でした。

松岡正剛の千夜千冊