- タイトル:熱狂する社員 企業競争力を決定するモチベーションの3要素 (ウォートン経営戦略シリーズ)
- 著者:デビッド・シロタ(著)、スカイライトコンサルティング(翻訳)
- 出版社:英治出版
- 出版日:2006-02-02
ミニレビュー
「社員の情熱」はどこから生まれるのか。
それを育て、維持するためにはどうしたらいいのか。
骨太なテーマをうまくまとめています。
価値ある絞り込み
「うまくまとめている」とは、例えばこのくだり。
人が仕事をするうえでの三つのゴールを、我々はここに宣言する。それは、公平感、達成感、連帯感だ。これを仕事のモチベーションにおける三要素理論として提唱し、次の主張を行う。
1. この三つは、労働者の欲求を代表するものである。
2. 労働者にとって、この三つを超えるゴールは存在しない。
3. この三つは、我々の知る限り普遍的なものである。時代や文化、少なくとも経済的な社会における文化に左右されるものではない。
4. これらを理解し、そのための経営方針・慣行を確立することで、社員の高い士気と企業の高業績を実現できる。この三つの欲求と企業側のニーズに衝突が起きることはない。
そして、企業がこの三つの欲求に答えて社内に「情熱」を育てるためには、「パートナーシップ文化」の醸成が必要であると主張しています。
読み手によって異論・反論はあると思います。著者も、もしかしたら多少の例外の存在を認めているかもしれません。しかし、このように思い切って「やる気の構造」を定義したことで、著者のメッセージはとても明快になっています。
主張を支える論理が明快なので、本の章立ても下のように分かりやすくなっています。
社員とのパートナーシップが情熱に溢れた社員を育てる
├社員の情熱が企業を動かす
├その情熱はどこから生まれるのか?
│├公平感を示す
││├雇用保障
││├報酬
││└敬意
│├達成感を与える
││├ビジョン
││├権限委譲
││├やりがい
││└フィードバック
│└連帯感を強める
│ └チームワーク
├パートナーシップを確立する
└成功への9ステップ
人事・組織論のバックグラウンドがそれほどなくても読み通せる平明さも備えています。また巻末にはパートナーシップ文化を導入する前に行うアンケート票が付けられています。チームあるいはプロジェクト単位で、自主的な勉強会ネタとして使ってみるのも面白いかもしれませんね。