カテゴリー
資料

人生に生かす易経

  • タイトル:人生に生かす易経
  • 著者:亞希子, 竹村(著)
  • 出版社:致知出版社
  • 出版日:2007-11-01

ミニレビュー

「時」と「兆し」の専門書

引用:

易経は英語訳では「Book of changes」、直訳すると「変化の書」です。東西の数多くの古典の中にあって易経の一番の特徴といえば、「時」と「兆し」の専門書であるという点です。(p33)

現代でも、未来を知るためにシンクタンクなどがやっきになって「兆し」をスキャンしています。四書五経の中で最古の書物である『易経』が、その「時」と「兆し」の専門書だった。第一章「易経の成り立ち」がこのように魅力的なので、一気に読み進んでしまいました。

ではどのように変化を知るのか。占い……では、必ずしもないようです。

引用:

「君子占わず」とは、「君子は占いなどはしてはいけない」という意味ではありません。「君子たらんと志す者は、易経を読んで変易、不易、易簡という三つのエッセンスを知れば、占わなくても出処進退がわかる」という意味です。(p31)

「変易、不易、易簡」を易の三義というそうです。簡単にまとめるとこんな感じ。
「変易」とは、すべてのものは変わるということ。
「不易」とは、その変わり方には法則があるということ。
「易簡」とは、その法則は観察によって分かるということ。

非常に意欲的というか挑戦的な発想です。易経とは、そういった人生や世の中のリズムとでもいうべきものが、それぞれ6つのシーン(爻)からなる64のストーリー(卦)にまとめられた物語の体系であると理解しました。

編集の勝利

この本は、その六十四卦の中の最初の卦である「乾為天」−これは龍の物語になっています−の解説に、全九章のうち六章が費やされています。こうやって思い切って絞り込んで解説してもらうことで、易経に込められている知恵の深さを窺い知ることができる。これは優れた編集ですね。

著者は易経の研究家。『漢籍の特別な素養があるわけではなく、ただただ易経が好きなだけの、ひとりの「愛読者×研究者」として、広大なる「易経の世界」の一端をお伝えしたにすぎません(まえがき)』とありますが、ビジネスや生活での事例をふんだんに盛り込んで、分かりやすく解説してくれています。

ネットで易経を検索して仕入れた豆知識を一つ。「韋編三絶」という諺がありますね。孔子が、とじひもが三回切れるほど本を熟読したという故事から来た諺です。孔子がそれほど繰りかえし読んだ本が、ほかならぬ『易経』。もうすこし勉強してみたくなりました。

リスト (from *ListFreak)