ミニレビュー
大前研一氏がすごいのは、普通の著者が難解な言葉でしか説明できない概念を分かりやすい言葉で語れること。実質的な処女作である本書は経営戦略を立案するコンサルタントのものの考え方を語って、既に古典の仲間入りをしています。
ものの考え方というレベルで抽象的に捉えると、全ての社会人が参考にすべき考え方がたくさん紹介されています。起-動線的な観点からそのようなポイントをひとつ挙げるとすると、戦略的思考家の心得として記されている「参謀五戒」。
これはリスクに挑み、何かを粘り強くやり遂げようと全ての人に通ずるポイントですので、ここに紹介しつつ意訳してみたいと思います。
◆参謀たるもの「イフ」という言葉に対する本能的恐れを捨てよ
つねに先読みを心がけ、What if …(もし…だったら)を問い掛けるということです。特にいったん動きはじめてしまうと、悪いケースを想定するのは億劫なものですが、リスクに挑むことと目をつぶって突進することとは違います。
◆参謀たるもの完全主義を捨てよ
しかし、完璧にこだわるべきではありません。そもそも完全な戦略などないし、戦いにおいてはタイミングが重要な因子。
◆KFSについては徹底的に挑戦せよ
完璧にはこだわらないということをよく理解したうえで、しかしKFS(Key Factors for Success、成功のカギ)については徹底的に挑戦するべき。何が成功のカギなのかを見定める部分が実は難しいのですが、一度KFSを定めたら、徹底的に成功のカギにこだわることがまさに「成功のカギ」。
◆制約条件に制約されるな
野中郁次郎氏は、『イノベーションの本質』で、イノベーションとは矛盾解消のプロセスに他ならないと述べています。制約条件と見えるものを粘り強くやっつけていかねば現状打破はなしえません。
◆記憶に頼らず分析を
客観的に分析をする力と(分析力)、そこから解を構想する力(概念をつくり出す力)。この2つを鍛えましょう。