- タイトル:「ソーシャルラーニング」入門
- 著者:トニー・ビンガム(著)、マーシャ・コナー(著)、ダニエル・ピンク(序文)(その他)、松村太郎・監訳(翻訳)、山脇智志(翻訳)
- 出版社:日経BP
- 出版日:2012-01-06
ミニレビュー
「ソーシャルラーニング」という概念がもっともよく表れていると思われるところを引用したくて、あれこれと探しました。このような選り好みは、結局のところ引用者の期待を反映します。
あたらしい学びの基盤は、このようなものであってほしいと思います。
学習者は深く関与すればするほど、学びが効果的になる。言い方を変えれば、学習者が質問をすればするほど、学習が強化されることになる。ソーシャルラーニングは、人々にとって(自分の)質問と、(自分の)答えの両方を容易に見つけることのできる手段であると言える。
質問と答えを見つけることのできる手段。なんと素敵な表現ではありませんか。とはいえ、この本に書かれていることが”The New Social Learning”(本書の原題)といえるのかどうかについてはまだ懐疑的です。
たとえば、最近のセミナーは、表面的には静かでも、参加者が裏で(バックチャネルで)tweetし合っていて、疑問などをリアルタイムでやり取りしている。だから理解が深められる、といったことが書かれています。この本の出版記念に監訳者と訳者が設計・登壇する出版記念セミナーがあるというので”The New Social Learning”を体感すべく出かけてみました。しかし、怒濤のような語りを聞きながら、あるいはつぎつぎめくられる興味深いスライドを見ながらでは、tweetする暇がありません。そしてバックチャネルに投げるべき疑問も、なかなかリアルタイムには浮かんできません。
聞く側のリテラシーの問題もあるのでしょうが、セミナーの設計者側にも、バックチャネルを活性化するための配慮が必要なように感じました。たとえばAgendaや主要なキーワードなどを事前に配布して参加者に考えてもらう「種」をまいておく。時間配分をすこしゆったりさせて、考えて書く時間を確保する。主催者自らがバックチャネルをチェックしながら進行して、臨機応変に話題を変えていく。などなど。そんなチューンアップを施していくことで、面白い学びの場が出来上がりそうな可能性は感じられました。
上の引用部分の次の文章が、また決め文句っぽくて格好いいので、こちらも引用します。
我々は、他者によって知識で満たされることをただ座して待つ白紙でもなければ、空のコップでもない。我々は意味を求める探求的生物である。物事を重要であると認識し、その理解を構築していくこと。それがより有意義であり、より生産性の高い学びのモデルなのだ。
(参考)
・学びの70/20/10モデル – *ListFreak
・ソーシャルラーニングを盛り上げている「3つの傾向」 – *ListFreak