ミニレビュー
過去一万年の人口史を、世界文明ごとに俯瞰していくという本。こういう壮大な試みが日本人によってなされているという事実を知るだけで何となく意気が上がってしまいます。
ごく乱暴に要約すれば、人口増という問題を、各文明が様々な(例えば農業・工業・イデオロギーにおける)ブレークスルーによって打ち破ってきたり、たまには疫病に負けたり、抑制によって解決しようと試みてきたり、そういう戦いの歴史を淡々と述べた本です(そもそも生活環境が良くなったから人口が増えるのか、人口が増えたので何とかしてきたのか、その辺も定説は無いようですが)。
やはり気になるのは、では今後どうなるの?という話なのですが、それは最終節の15ページほどにまとめられています。
このまま増え続ければ破綻するのは明白としたうえで、大きく3つのシナリオが考えられます。
1. またもや農業革命が起き、農業生産性が飛躍的に向上して何とかなってしまう
2. これ以上の農業革命は起きず、人類も対策を打たないので壊滅的な打撃を被る
3. これ以上の農業革命は起きないということを人類が理解し、人口抑制策を取る
著者は農業生産性の飛躍的な向上が望み薄である事をまず指摘し、3. を支持する立場を取っています。1.のような楽観的なシナリオを否定するわけでは無いものの、当てにすべきではないとの主張です。
面白い本だと思いましたが、難点は文章が少々ぺダンチックというか、凝り過ぎているところでしょうか。例えば、最後の一文を引いてみましょうか。
—–(引用)
何らかのリスクを理由に事実上何もしないことは、美しいローマン主義的言辞に飾られながら第一の野垂れ死にへの道を切り開くのである。むろんそれも人類の選択のひとつであるが。
—–
(第一の道というのは上の2.のシナリオのことです。)