ミニレビュー
現代医学の問題点を痛烈に批判した本。現代といってもこの本が書かれたのは1979年で、著者は『アメリカでは「民衆のための医者」と呼ばれて親しまれた小児科医』、つまり現役のお医者さんで。当時アメリカでは30万部以上売れたそうです。
和訳が出たのは20年後の1999年。すでに巻末の解説にはこうあります。
引用:
この間に、医学界にはさまざまな変化が訪れています。しかしながら、本書に指摘されているような本質的な問題の図式が、現在も依然として変わることなく存在していることには驚きました。
わたしが読んだのはその7年後の2006年。個々の技術的な話は参考にならないかもしれませんし、もとより知識がないのでわかりません。ただ、専門家集団が陥りがちな振る舞いというものは普遍的に存在しますので、知っている業界と引き比べて考えると「こういう恐ろしい話もありえるな」と感じます。たとえば顧客(患者)の満足度を高めるよりも自分の腕前を高める方に興味が行ってしまうとか、顧客(患者)に必要とはいえないサービスを、利益維持のために押しつけてしまうとか、顧客の声を聞くことを面倒に思うとか。
そう言った意味で、現代医療を盲信せず、健全で合理的な疑いを持ち続けるためにはよい本だと思いました。
敢えていえば、おそらく意図があったのでしょうが、文章の調子がちょっと激越で、却って信頼性を下げているような印象があります。もう少し淡々とした定量的な告発の方が迫力があったかもしれません。