ミニレビュー
『公務員、辞めたらどうする?』の山本 直治さんの新著。公務員を辞めて人材コンサルタントになった山本さん、すかさず『人材コンサルタントに騙されるな!』と来ましたね。
タイトルはやや煽り系ですが、中身はまっとうな業界・職業研究本です。
私は本書を通じて、企業広告ではない中立的なかたちで人材コンサルタントの仕事の実態を紹介することで、多くの方々に人材紹介業界に対する理解を深めてもらいたいと考えている。(まえがき)
「自分は転職できればいいのであって、手伝ってくれるコンサルタントたちの業界の中まで知る必要はない」と思われるかもしれません。ただキャリア「コンサルタント」といっても、誰のコンサルティングをしているのかは知っておくべきでしょう。彼らに報酬を支払っている「クライアント」は求人企業ですから、商売の視点から定義すれば、企業の採用活動のコンサルタントということになります。ということは求職者たる我々は、人材コンサルタントから見れば「商品」です。自分は「顧客」だと勘違いしてはいけません。
こう書くと少々厳しく聞こえますが、求職者は相手のそのような立場を理解して初めて人材コンサルタントと対等にお付き合いをすることができると思います。そして私の知っている人材コンサルタントの皆さん(もちろん著者の山本さんも含めて)は、おしなべて「人が好き」「キャリアを考えることが好き」な方ばかり。時には商売を度外視して求職者の相談に乗っています。
山本さんは、人材コンサルタントがビジネスの構造から受けざるを得ないバイアスや現場で直面する葛藤について本書で率直に述べており、業界外の方にとって分かりやすい解説書となっています。
それにしても驚くべきは、転身後2年でここまで業界の全体を把握し、一冊の本にまとめ切った山本さんの筆力。かなり分かりやすくまとまっていると感じました。さすが元キャリア官僚ならではの調査・構想力?