ミニレビュー
「プロフェッショナル」の心得帖
「シンクタンク」とは何をする仕事か。わたしの理解を一言で言えば、「提言」です。
提言とは意見を表明すること。意見といってもただの言いたい放題ではなく、受け手をして価値があったと思わしめる深みのある意見。ですから、「見識を披露する」と言い換えます。見識を披露するということは、以下のような作業になるでしょう。
・特定の領域を定め、
・その領域での情報収集を行い、
・その情報を分析・解釈し発信する
これがプロフェッショナルとしての個人に求められるようになる。それが本書の要約です。大いに共感するところです。
田坂さんの著作を読んでいつも感じることですが、今回も言葉選びが巧みで印象的です。テーマに詳しくない人も分かる一般的な言葉で、かつ詳しい人でも、「なるほど、うまい表現だな」と思わせる言葉を選ぶ。そういう言葉が溢れています。例えば、ネットを使った情報収集の心得を説いて曰く、
『「サーベイ」と「フォーカス」の切り替えを身につける』。
日頃リサーチをされている人なら、誰でもピンと来る表現でしょう。それでいてしばしば実践できないことなので、「サーベイとフォーカス、なるほど覚えておこう」となります。そうでない人でも、平明な言葉で書かれた本文を読めば、タイトルの意味するところがよく分かると思います。
なぜなら、プロフェッショナルは、あるテーマについて情報や知識を得るとき、個別の知識を得るだけでなく、二つの矛盾したことを同時に行わなければならないからだ。
第一は、そのテーマについての「長期的なトレンド」や「大局的な構図」を知る。
第二は、そのテーマについての「印象的なエピソード」や「象徴的な物語」を知る。そして、この二つをともに知ることは、「個人シンクタンク」の知的活動にとって、極めて重要なことである。
(p67、太字は原文のまま)
そして、プロフェッショナルはこのように分かりやすく説明できる能力を身につけるべきとも。
「分かりやすく語る智恵」
(略)もし、プロフェッショナルが「個人シンクタンク」への進化をめざすのならば、この智恵こそが、まず最初に身につけるべき智恵でもある。
(p120、太字は原文のまま)
内容に共感できたのは、ひとりカンパニーとしてこの本に書かれているようなことを目指してこの4年やってきた(こざるを得なかった)から。わたしのようなひとりカンパニーにとっては、情報収集であれ発信であれ、この本に書かれていることはすべて死活問題。この本をチェックリストとして、いま足りないもの、これから目指すべき姿を整理してみたいと思います。