- タイトル:CEOアカデミー―最高の経営者たちが教える企業経営の極意
- 著者:ケアリー,デニス・C.(著)、ヴァイクス,マリー・キャロライン・フォン(著)、Carey,Dennis C.(原著)、Weichs,Marie‐Caroline Von(原著)、主税, 鈴木(翻訳)、緑美子, 桃井(翻訳)
- 出版社:日本経済新聞社
- 出版日:2004-08-01
ミニレビュー
著名CEOの紙上講演集
21人の米国企業のCEOがそれぞれリーダーシップ、取締役会との関係、経営戦略の実行、社外との関係構築といったテーマで行った講演をまとめたもの。その名もCEOアカデミーという組織が主催しています。
「善」か「善」かの選択
個人の意志決定という観点から面白かったのは、ジョセフ・L. バダラッコ教授の「ビジネスでの倫理的ジレンマ――どちらの選択も正しいとき」でした。
生か死かの問題に答えをだせとせまられる人はそういないが、「善」対「善」の問題を突きつけられることは誰にもままある。日常生活にもこうした例があるだろう。処理しなければならない仕事が山ほどあるのに、家族とも一緒に過ごしてやりたい。子供のサッカーの試合もあれば、入院している友人の見舞いにも行かなければならない。これは善か悪かの選択ではない。はたすべき、、二つの義務のうち、どちらをとるかという問題だ。
ビジネスでそのような場面にぶつかったら、どうすればいいだろうか。
このような問題に対し、バダラッコ教授は倫理的判断のための立脚点として「四つの問い」を挙げています。
・最大多数の最大善―道徳上のジレンマに直面したとして、それにかかわる全員にとって最も益が多く、最も害が少ないのはどの選択肢だろうか。
・基本的権利の問題―判断の結果に影響される個人ないしグループで、誰またはいずれの基本的権利を尊重すべきだろうか。
・人格者はどうするか―「善」対「善」のどちらをとるかを決めなければならないとき、自分が越えたくない一線、あるいはわれわれが集団として越えてはならない一線はどこだろうか。
・世間に通用するのは何か―あなたが組織の責任者ならかならず決断の場面に直面し、そのときには個人としての道徳的な選択(略)は組織への責任と両立しない。倫理にかなうと思われた行動であっても、うまくいかなければ、その行動は現実として価値がない。
さらに、上記のような問いを考えるための指針となるテストを挙げています。少々言い換えればこんな感じです。
ある行動の結果が、
・大手メディア(新聞やニュースサイト)のトップに掲載されるとしたら?
・その行動によって運命を左右されるのが自分の子供だったとしたら?
・自分の死後の評価が、その行動の結果で定まるとしたら?