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経営革命大全―世界をリードする79人のビジネス思想


ミニレビュー

「経営のグル」というマーケット。ゴシッピーな感じがいい

企業経営の世界には、Guru(グル、尊師、権威)と呼ばれる先生たちがいます。そういう先生たちの、誰が何を言っているのかという辞書がこの本。

単なる辞書でなく、著者なりの解釈を加えつつ解説しています。ドラッカー、ピーターズ、ポーターなどなど80名弱のGuruが200冊以上の本や3000以上の論文でいったい何を言ってきたのか、そのエッセンスを抽出しようという試みで、お得感があります。

著者は、実業界にいる人たちが競争環境にあるように、先生方は先生方で”Guru”の地位を手に入れるために頑張っているというスタンスに立っています。例えばリーダーシップについてまとめた第1章ではこんな感じ:

引用:

 

 多くの、そして野心に満ち満ちた権威(グル)たちが、なぜリーダーシップというテーマに取り組むのか?理由は簡単だ。リーダーシップ術の指南が実に儲かるビジネスになったからである。

他にも、経営学の大家たちのゴシップ記事っぽい文章が多くて、なかなか読んでいて楽しかったです。

チャールズ・ハンディ=トム・ピーターズ説

そもそもなぜこの本を読んだかというと、チャールズ・ハンディが出てくるからでした(ほとんど追っかけですな)。

『21世紀ビジネスはこうなる』ではスティーブン・コヴィーと並べられたハンディですが、この本ではドラッカーとトム・ピーターズと一緒のカテゴリに入れられています。しかし、著者のセレクションはなかなか慧眼だと思ったので、ちょっと長いですが引用します。

引用:

 

 ここでは、ドラッカーと同じテーマで数多くの著書を出版している2人の権威(グル)について見てみることにしよう。ただし、あらかじめ警告しておくが、2人のスタイルはまるで異なっている。1人は感情を表に出し、生き生きとした文体で語りかけてくる。(略)もう1人は穏やかで論理的な調子で(略)講義を行ってくれる。将来に対する見方も、一方は楽天的、革新的であり、他方は哲学的、思索的である。だが、両権威(グル)の伝えようとしていることには共通点も多い。両権威(グル)の読者に違いがあるとすれば、それはどのような教師が好みかということだけである。読者の評価が分かれるのはスタイルであって、内容ではない。よく似たメッセージをまったく異なったスタイルで伝える2人の権威(グル)とは、トム・ピーターズとチャールズ・ハンディである。

そして、この本の締めくくりをハンディの引用で終えてくれているのも嬉しいところ。ハンディは『大規模組織における仕事がすべての人に真の幸福をもたらしたことは一度もなかった』とし、大規模組織時代の終わりを予測しています。書評の終わりに、この本の本文の最後の部分を引用しておきます。

引用:

 

引用:

 

希望は未知なるものの中にある。(略)創造性は混沌の中から生まれるのである。何をやるのか、どこに所属するのか、なぜそれをやるのか、どこでやるのか――これらに関して、考え方は様変わりし、よりよきものになるであろう。変化はまず小さな第一歩から始まる。(略)暗闇に小さな灯をともすのは、我々自身の役目なのである。

 そういうことなのだ。最も優れた経営管理論、組織論を凝縮した本書が、自分の灯をともそうとする読者のお役に立てれば幸いである。

※「暗闇に小さな灯をともす」というのは、聖書の言葉の引用ですね。