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小説ブッダ―いにしえの道、白い雲


ミニレビュー

「ダライ・ラマ14世と並んで、現代社会における実際の平和活動に従事する代表的な仏教者」(Wikipedia)ティク・ナット・ハン師によるブッダの伝記小説。

いったいどんな本なのか。訳者の池田 久代さんによる端的なまとめをお読みください。

引用:

人間ブッダとその八〇余年の生涯をとり巻く人々の愛と苦悩を抒情豊かに語り、南方・北方両仏典群の出典を確認しながら悟りへの方法論を示し、著者の半世紀におよぶ仏道修行の結実としての智慧を明晰なことばで語り、そして何よりも、戦争と暴力と地球環境の破壊を体験してきた二〇世紀の人類への祈りが行間からにじみでています。(訳者あとがきにかえて)

「著者おぼえがき」で、著者は『しばしば経典には、ブッダの生涯を飾り立てるために奇跡が出てくるが、私は奇跡の多くを省いた。だいたいブッダ自身、超自然的な力を獲得したり発揮しようとして時間と労力を無駄にするな、と弟子たちを戒めている。』と書いています。本書のブッダは、お母さんの腋の下から生まれたり、生まれるやいなや「天上天下唯我独尊」と言ったりしません。おかげで安心して読み進めることができました。
さらに『その一方で、ブッダがその生涯のうちに、対社会的な関係や弟子たちとのあいだで遭遇した数々の困難は、本書に収めた』とのこと。おかげでリアリティを感じつつ読み通すことができました。

超自然的なエピソードを省いても、やはりブッダは超人です。何が超人的かというと、その明晰さ。一般人は言うに及ばず、王様・行者・異宗教の信奉者など、ブッダと言葉を交わした人はその教えの明晰さに衝撃を受け、次々と帰依していきます。けしからんと言われそうな例えで恐縮ですが、主人公が踊りながら走り出すと街のみんなも踊りながら付いていくミュージカル映画みたいな楽しさを感じてしまいました。

経典というものの性格上、後代にまとめられた教えを開祖ブッダの言葉として伝えるといった脚色はあるでしょう。でも千年に一人くらいは、こうやって神話化されてしまうくらいとびきり明晰な人が現れることもあるのではないか、と思えるリアリティを感じました。

あと、ひとつながりの物語として読めたおかげで、八正道とか五蘊とか、いろいろなリストの位置関係が分かってきました。著者がまた、並々ならぬ力量で、それらを分かりやすい言葉で説明してくれています。そういう意味では訳者にも感謝を捧げねばなりません。

分かりやすく解釈されたリストの一つをご紹介します。

  • 【慈】怒りを克服するためには慈しみを学びなさい。慈しみはいっさい見返りを求めることなく、他者に幸福をもたらします。
  • 【悲】残酷さを克服するにはあわれみを学びなさい。あわれみはいっさいの見返りを求めることなく、他者の苦しみをとり除きます。
  • 【喜】憎しみを克服するために共感する喜びを学びなさい。共感する喜びは、他者の幸福を喜び、他者の幸福や成功を望むときに生まれるもの。
  • 【捨】偏見を克服するために無執着を学びなさい。無執着はすべてをひらかれた心で平等に見る力です。

四無量心(慈悲喜捨)*ListFreak

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