ミニレビュー
富士通の人事部社員によって書かれた、
成果主義がうまく運用されなかった顛末。
資料的価値は高いと思います。しかし
読み手の気持ちをザラザラさせる本でもあります。
「これって単なる著者のグチ?」
「当事者だったのにどうしてこんなに他人事的なスタンスなの?」
「この独特の英語混じりな表現はナニ?」
「…と言いながら夢中になって読んでいる自分って、覗き趣味?」
とにかく色々気になる本でした。
タイトルの成果主義に付けられたカッコ(「」)に、実は重要な意味があります。
このカッコは英語の the のような役割を果たしています。
著者は一般的な成果主義を否定しているわけではなく、「富士通で導入・運用された成果主義体系がうまくいきませんでした」という事例を述べているに過ぎません。
その原因を端的に表現していると思った箇所を引用しておきます。相対評価から絶対評価への移行が上手くいかず、ある階層以上(あるいはある部署)では「みんなA評価」になってしまったことを述べているくだりです。
これが起こったのは、「成果主義」の問題ではなく、日本の企業文化 corporate culture、さらに言えば、日本人の生き方 life style の問題にあると思えるからだ。
つまり、これまで「年功序列制度」seniority system と「終身雇用」 lifetime employment system に守られてきた日本人は、本当の競争社会を心の底から嫌っているのだ。制度のいかんにかかわらず、人を公平に評価する fair evaluation ことができないのである。ともかく、人を評価することで、波風が立つのを極端に嫌う。
仕事に評価はつきもの。職場で活かされるとはどういうことなのかを考えるヒントになる本として、このカテゴリに。