- タイトル:ブレイクスルー -イノベーションの原理と戦略-
- 著者:Mark Stefik(著)、Barbara Stefik(著)、鈴木 浩(翻訳)、岡 美幸(翻訳)、永田 宇征(翻訳)
- 出版社:オーム社
- 出版日:2006-07-11
ミニレビュー
引用:
この本は、学術的な作業として書かれたのではない。企業における研究で、何が起こっており、何がなされるべきなのかを理解しようとする、紛れもなく実用的な活動の一環として書かれた。(p340)
著者はPARC(パロアルト研究センター)のフェロー。自ら関わった豊富な事例とインタビューを通じて、企業がイノベーションを産み、育て続けるために何が必要かを考察しています。
個人的に面白かったのは、企業のイノベーション文化には「クライアント志向」(ビジネス視点)と「パトロン志向」(発明視点)とがあり、市場の成熟度に応じて志向性を切り替えていく必要があるという第11章。
┌──┬────────┬────────┐
│ │パトロン志向 │クライアント志向│
├──┼────────┼────────┤
│観点│発明 │ビジネス │
│問い│何が可能か? │何が必要か? │
│責任│経営上層部 │事業部門 │
│展望│長期的 │短期的 │
└──┴────────┴────────┘
イノベーション文化は、最初はパトロン志向で始まりますが、市場が成長期に入るつれクライアント志向へとシフトします。これは、『今の製品と技術の方向性に自信を持ち、現在の事業に集中することにより、自社が最大の成長を遂げるべく努力する(p281)』ため。
その後、変化に追随できる企業は、『市場が飽和し、企業がもっとブレイクスルーを必要とすると確信したとき、イノベーション文化はクライアントモデルからパトロンモデルに転換』します。
わたしも一時期R&D的な部署にいたことがあります。研究所で(つまり自社コストで)開発したサービスがうまく発展し、顧客が興味を示してくれると、大体はその責任者が現場のプロジェクトに参加して支援を行い、うまく行けば様々なプロジェクトへと展開されます。やがてR&D責任者はお役御免になって研究所に戻って、次の研究テーマに取り組む…というサイクルでした。たしかに。