カテゴリー
資料

「うまくいく人」の頭のいい話し方


ミニレビュー

たまたま目にしたBBCのページで、「現在のアサーション・トレーニングの多くは、1975年にManuel J Smithが著した”When I Say No, I Feel Guilty”を源とする」といった記述があり、興味をひかれました。訳本を調べて探し当てたのが、30年後に訳されたこの本。タイトルを直訳するなら「NOと言うのは後ろめたい」という感じですかね。

たしかに、NOと言うとき、どことなく後ろめたさを感じます。そこにつけ込んで、次のような論法で相手をあやつろうとする人もいます。

パラパラと読んでいって、最初に共感したのは次のリストでした。ひとは自分の主張を通したいと思うあまり、こんな一般論をふりかざしがちという話。

  • 悪いのはあなたのほう
  • もっと人の心に敏感になって、あなたの行動を不愉快に思っていることに気づきなさい
  • どんな行動が人を不愉快にするか、常識として知っているべき
  • 人を傷つけたり、怒らせたりする行動はつつしみなさい

人をあやつろうとする人の4つの決めつけ*ListFreak

「人の心に敏感になれ」ということ自体は、反論の余地なく正しい。しかし実は話者が言いたいのはそういう一般論ではなく
「人の心に敏感になれ」→「私の心にも敏感になれ」→「私の思いを優先させろ」
ということだったりします。

ハッとさせられたのは、自分がそう主張する理由を言わなくてもいいというくだり。日ごろ「主張には根拠を添えよう!」という類の研修をやっていたりするので、新鮮でした。
理由を言わなくてもいいケースとはどんなケースか。たとえばAという商品を勧められて、買わないと答えたとします。すると売り手は、その理由をたずね、ひとつひとつつぶそうとしてきます。お金がない?ローンが組めます。必要ない?みんな買ってます。みたいな感じです。そのやりとりのひとつひとつに、先に引用したような「あやつり」が入っていると、NOと言えないどころか罪悪感を感じさせられたあげくYESと言わされてしまうかもしれません。

そういう心理操作合戦をやめて、おたがい自分の感情をストレートに伝えてみよう、実はそのほうがうまくいくんですよ、というのが著者のもっとも言いたかったことだと思います。とはいえ、紙面の多くは、自分をあやつろうとする人たちにいかに対抗するかということに割かれています。結果として、どことなく攻撃的コミュニケーション手法であるかのような印象を受けてしまいます。コミュニケーションに受信と発信とがあるとすると、発信側の話が多いからかもしれませんね。

本書で紹介されているテクニックはこんな感じ。

  1. 針のとんだレコード … ねばり強く自分の主張を繰り返す。主張の理由は説明しない。
  2. 妥協案の提示 … 自尊心を保てる範囲で歩み寄る。自分の誇りを傷つける妥協はしない。
  3. 自己開示 … 自分の考えや感情を明確に表現する。自分の本音・本心を尊重する。
  4. のれんに腕押し … 批判に対して否定・弁解・反論をしない。事実を認め、受け流す。
  5. マイナス事実に同意 … 失敗や欠点は、その事実のみを認める。卑下や正当化をしない。
  6. マイナス事実の質問 … 自分への批判について具体的にたずねる。自分を正当化せず聞く。

アサーティブ法 6つのテクニック*ListFreak

この本には載っていませんが、原書にはアサーションに関する権利章典という面白いリストもあります。

リスト (from *ListFreak)