ミニレビュー
『一万年の旅路―ネイティヴ・アメリカンの口承史』に圧倒されたのは2年前。この本は同じ著者による「学びの物語」です。
父が物語を語り、「何が学べたか」を問う。娘は物語が喚起するイメージの世界で考えを深めていって、自分なりの発見をする。父はまた物語を語る。それが、単なる「質問」と「正解」のセットとしての知識を蓄える以上の学び ―世界の多様性をそのまま受け入れたうえで意思決定をしていくこと― を可能にします。
六の法則
その象徴が「六の法則」として紹介されています。
引用:
いまよりもっと若かったころ、私が父に自分の考えを伝えると、よく「六の法則を思い出してごらん」といわれました。
「六の法則」というのは『形をとったすべての現象について、その現象をきちんと説明できる説明を少なくとも六通り考え出すこと』。物語それ自体は、ある一つのシーンや現象の描写ですが、その現象にいたる原因は一つとは限りません。
引用:
説明は六〇通りあるかもしれませんが、もし六通りでも考え出すことができれば、あとどれだけたくさんの説明が成り立ちうるかに察しがつくでしょうし、最初に思いついたもっともらしい説明を”真理”に祭り上げることも防げるでしょう。
リアリティーの鍵はディテールにあり
冒頭、「八つの冬を越した少年」という表現を見つけて
「そうそう、この感じ」と思ってしまいました。
ただの八歳ではなくて「八つの冬を越した」少年です。
これだけでイマジネーションが膨らみます。
荒唐無稽な気もする話なのに、強いリアリティがあるのはなぜなのか、
『一万年の旅路』のときはよく分かりませんでしたが、
ちょっとヒントを得た気がしました。