ミニレビュー
父は、ぼくが4歳のときに死んだ。それから11年後、父からの手紙がおもちゃの車のなかで見つかった。手紙には、父とオレンジガールとのふしぎな物語がしたためられていた。そして、父は、いまのぼくにどうしても答えてほしい、とても大切な質問も用意していた。
(表紙折り返しより)
こういう本を見つけてしまったら、4歳の男の子のパパとしては読まざるを得ないですよね。いまから数ヶ月で死ぬとして、未来の子供にどんな物語と質問を遺すか…?
小説なので中身をあまり書いてしまうわけには行きませんが、こういう舞台設定でなければならない理由は「訳者あとがき」に書いてありました
作者のゴルデルは、以前、あるインタビューでこんなことを語っていた――「ぼくにとっての哲学は二つのカテゴリーから成っている。大きな疑問に基づくものと小さな疑問に基づくものだ。たとえば死の床についている人が、宇宙はどれだけの原子で構成されているのかなどと気に病んだりはしないだろう。その人にとってはむしろ、だれそれはわたしを愛しているだろうかだとか、だれそれはわたしを許してくれただろうかとか、そういった卑近な疑問こそが、しばしば切実な問題になるものだ……」
とても身近な人(息子)にとても大きな問題(死生観のようなもの)を語りかけるというかたちで、上で言っている「二つのカテゴリー」を両方とも織り込んでいるんですね。
ジャンルとしてはおそらくヤング・アダルト小説ということになるのでしょうか、高校生±3歳くらいが想定読者なのだと思います。しかし家族・死・生という普遍的なテーマですし、内容が子供向けだとも思いませんでしたので年代を問わず楽しめ、そして考えさせてくれる本としてこのカテゴリーに。
#ヨースタイン・ゴルデルといえば『ソフィーの世界』ですがこれは未読。