ミニレビュー
一人で会社を作ると、ひとは個人でありながら法人にもなる。その法人と個人との間で収入をうまく配分すれば、節税になる。表のストーリーの主旨はそんな感じです。
一人会社(この本では「マイクロ法人」)の話は、著者が2002年に書いた『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 ― 知的人生設計入門』に、すでに登場しています(もっと以前から主張されていたかもしれませんが、たまたまこの本で初めて目にしました)。今回は、その集大成という感じです。「(マイクロ)法人の会計」と「個人の家計」を行ったり来たりしているうちに、アカウンティングとファイナンスの考え方が学べる仕組みになっています。
わたしも、期せずしてマイクロ法人になってしまい、もう7年近く続けています。サラリーマン時代は、会社としての節税対策は、会社の「どこかの誰か」がやってくれるものでした。しかしマイクロ法人では、当然ながら自分で考えなければなりません。ですので、節税対策のパートは興味を持って読みました。
本書は、正社員か独立かという選択の話ではありません。労働形態は結果として考慮すべき選択肢ですが、それ以前に「自由をめざそう」という強い目的意識が語られます。自由を追求するために、経済的な自由を確保しよう。そのためには、社会をめぐるお金の動きに自覚的になろう。そういうメッセージが発せられています。
たとえば冒頭では、いわゆる「派遣斬り」問題が「正社員こそ安泰」という認識に転化している風潮をとらえ、自由度の観点から疑問を投げかけています(正社員がどのように安泰でなく、どのように自由でないかという点については本書に譲ります)。
とはいえ、「雇われない生き方」という副題が示唆するとおり、大きなテーマとなっているのは独立です。架空のケーススタディとして、マンガ「サザエさん」のマスオさんがマイクロ法人を設立します。
倫理や社会正義の話をひとまず横に置いて「現実はこのようになっているので、このような選択も可能である」という指摘をつらぬくスタイルは、過去の著作と変わりません。