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松浦弥太郎の仕事術


ミニレビュー

ジャケ買いしたという友人から、カバー付きの状態で、貸してもらいました。そりゃそうですよね。大事な表紙ですから。

ちょっとカバーの内側を覗いてみると、たしかにすてきな表紙です。表紙の一部に入るかどうか分かりませんが、帯の言葉を引いておきます。

「どんな仕事でも、その先に人がいることを忘れない。『暮しの手帖』編集長、書店経営、文筆家と、三つの顔をもつ著者がおくる、仕事の哲学と発想法。あなたの働き方・暮らし方が変わる、34の新ルール。」

ひとことで言えば「謙虚に、厳しく、ときどき説教くさい」本です。これはいい意味ですよ。「謙虚」さは、たとえば「はじめに」の締めくくりにあらわれています。

『 本書のようなビジネス書という世界で、書かせていただく若輩の僕のあれこれは、大いにおせっかいなことかもしれません。それも含め「仕事術」なんて生意気な言葉の使い方をどうぞお許しください。』

しかし、ひとたび本文に入れば「〜させていただく」「お許しください」などという言葉は使われません。自分に厳しい仕事ぶりを読むにつれ、背筋が伸びてきます。

基本的には著者が自分の仕事術を紹介しているのであって、オレの真似をしろとかこうすればうまくいくとか、読者に何かを求めているわけではありません。しかしところどころに、たとえば「仕事の本質のほとんどが、準備という行いと知りましょう。」(p127)といった文に、読者への期待も垣間見えるように思います。

「流されたら理念に戻る」というルールから、お気に入りの箇所を紹介します。

引用:

 劇的な出来事が起こり、ある日突然、自分の理念に反することをしなければならない。こんな事態は滅多に起こりません。理合は静かに侵食されていきます。
「忙しくて」と走り続ける毎日。
「わかっているけど仕方ない」という言い訳。
「瀬戸際だから、そんなのんきなことを言っている場合じゃない」という開き直り。
 こうした小さな砂粒が積もり積もって、理念をなし崩しにしてしまいます。