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コンセプトノート

349. 高質な思い

個人的な思いが、どのように人を動かすのか。かつて、聞き手の立場からこのように書きました。

聞き手が語り手の問題意識を「我がこと」として感じたとき、聞き手は語り手に「共感」します。聞き手が、この「我がこと」は「皆のこと」でもあると感じたとき、聞き手は語り手の「大義」を感じます。このようにして、聞き手は語り手個人の問題意識が社会的・事業的なインパクトを生み出し得ることに気がつくのです。

クリエイティブ・チョイス

今週読み始めた『MBB:「思い」のマネジメント ―知識創造経営の実践フレームワーク』に、似た話がありました。個人の思いが組織の思いに昇華していく過程を、組織による「思いの正当化」と呼んでいます。

 自分が勝手に、独りよがりの思いを持っていても、それは知識経営にはつながらない。他者と交流する中で知を交差させ、ぶつけ合って、組織的に知識を正当化して、より高質な知識を生み出していくことが重要である。そのためには、最初は自分一人の思いに出発点があるとしても、それを他者と共有し、切瑳琢磨し、組織的な思いとして磨き上げるプロセスが重要だ。
 これを、組織による「思いの正当化」という。

個人の思いがすべて、そのようなプロセスに耐えられるわけではありません。著者の野中郁次郎氏らは、多くの人に共感され、共有されていく思いを「高質な思い」と表現しています。

では「高質な思い」の条件とは何か。著者らは5つの条件を挙げています。

  1. 正義、普遍性、グローバル性を持っているか。人類としての共通の真善美などの価値観にそむかないものであるか。
  2. どこまでより大きな枠組みに貢献しているか。地球、人類、世界、国、地域社会、会社、部、課、チームなど。
  3. 自分の生き方や人生観に根差しているか。どれだけ自分の価値観に深く根差した強固なものであるか。困難に出会っても揺るがず情熱を傾けられるものか。
  4. 本質的な、新しい価値創造に貢献するか。現在の問題の本質を突き、問題の解消につながっているか。
  5. 明るく、前向きで、発展性があるか。より多くの人々にとって、ワクワクするより良い社会像を目指しているか。

思い(Belief)の質を高める5つの問い*ListFreak

とんでもなく厳しい条件のように思えますが、最初から個人の思いがこの条件を備えているべきとは書かれていません。先に引用した部分にあったように、他者にぶつけていく中で磨き上げられていくとあります。まず用意したいのは、ぶつけるに足る個人的な思いの種と、それをぶつけられる仲間でしょうか。