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コンセプトノート

154. 自分の土俵はどこに、いくつあるか

相撲型組織と野球型組織

 人々が閉ざされた世界の中にいて、一元的な尺度で序列づけられる場合、”ゲーム”の楽しさを味わえるのは、トップ争いをする一握りの人たちだけです。

『認められたい!―がぜん、人をやる気にさせる承認パワー』という本からの引用です。この本では、上記のような状況の組織を「相撲型組織」と呼んでいます。

相撲の世界は、「番付」が高い人が偉い。
その番付は、基本的に「勝敗」で決まります
(最上位クラスでは品格なども考慮されるようです)。
その勝敗を決するのは「個人の能力」。
年齢や人格や国籍は関係ない。

そして番付という序列は、相撲界で生きる限り、引退後にも持ち越されます。
例えば、相撲協会の理事も横綱・大関が圧倒的に多い。

同じプロスポーツでも、野球やサッカーはどうか。
同じく実力主義の世界ながら、相撲よりは選択の余地が広そうです。
たとえば「コンバート」。投手を目指していた選手が野手に回ったりします。
これは我々社会人の世界で考えれば「キャリア・チェンジ」に近い。
あるいは、野球なら代打あるいは走塁要員、サッカーならスーパーサブなど
「スペシャリスト」的な起用に応えるというチャンスもある。

引退後の世界でも、名選手が重用される傾向はあるものの、ほとんど無名だった選手が名監督として名を馳せているケースも多い。「名選手は名監督にあらず」なんて言葉もある。

こういう切り取り方をするのは相撲に対して不公平かもしれませんが、イメージはよく分かりますね。

自分の土俵はどこに、いくつあるか

上記の本は個人向けというよりは組織論の本なので、相撲型組織ではなく社外を含めて複合的に個人が認められる機会をもった組織をデザインしようという話になっていきます。

個人の立場からすると、現在の環境が相撲型でないかどうかをチェックしてみることはもちろん意味があります。しかしより重要なのは、自分の世界が相撲型だと「思い込んで」いないか、相撲型の仕事観に染まりすぎていないかと疑ってみることではないでしょうか。

○○の経験がないとこの仕事は難しいと言われた。
○○の資格がないと転職は難しいと言われた。

我々はいろいろな局面で「土俵にも登れない」経験を味わいます。土俵にもいろいろあります。会社として信用がないと登れない土俵、学歴や業績がないと上れない土俵、人脈がないと上れない土俵などなど。

しかし幸いなことに、世の中のルールはスポーツよりは遙かに緩い。土俵は話し合いで動かせますし、自分で土俵を作ってしまっても、人が価値を見出してくれさえすればオーケーです。

一度、他人の土俵に登るという発想を捨てた方がいいかもしれません。例えば「マーケターになる」「ITアーキテクトになる」といった言い方も、すでに他人の土俵です。

仕事は、お客様が求めているものと、
自分が提供できるものの接点に生じるもの。
そこが自分の土俵です。
それは、どこに、いくつ、ありそうですか。
それぞれに、どんな名前を付けますか。