法四依
法四依(ほうしえ)というリストを見つけました。
- 義に依りて語に依らず …… 意味に依拠して、文辞に依拠しない
- 智に依りて識に依らず …… 智慧に依拠して、知識に依拠しない
- 法に依りて人に依らず …… 真理(法性)に依拠して、人間の見解に依拠しない
- 了義経に依りて不了義経に依らず …… 仏の教えが完全に説かれた経典に依拠して、意味のはっきりしない教説に依拠しない
法四依 – *ListFreak
現代の文脈に置き換えても役に立ちそうな心得ばかりです。「義に依りて語に依らず」(意味に依拠して、文辞に依拠しない)という教えに乗って、あえて詳しい解説を読まずに、思考や決定の心得として解釈してみます。
「義に依りて語に依らず」で思い出されるのは、建設的に考えて議論するための「慈善の原則」です。
- 相手は言葉を通常の用法で使っている。
- 相手は真実を述べている。
- 相手は正当な議論を立てている。
- 相手は興味深いことを言っている。
コミュニケーションにおける慈善の原則 – *ListFreak
「智に依りて識に依らず」(智慧に依拠して、知識に依拠しない)。仏教用語としての「智慧」を一般的な「知恵」に置き換えたうえで、「知識でなく知恵に依れ」という言葉の意味を考えるとき、わたしが思い出すのは「知恵のバランス理論」です。これはごく大ざっぱに言うならば、「知恵とは決めつけないこと」だという理論です。
二分法的思考を避け、決めずにおくという曖昧さに耐え、最善のバランスを模索する。知恵は、そのとき・その場で発揮される動的な決断のなかに顕れます。
「法に依りて人に依らず」(真理に依拠して、人間の見解に依拠しない)。これは客観的な思考の重要さを示していると言っていいでしょう。「あの人が言っている・やっているから」を根拠にしない。証拠で裏付けられるものは科学的に、そうでないものは思弁を尽くして哲学的に、根拠づけを試みる。
そのように考えると、4項目めの「了義経に依りて不了義経に依らず」(仏の教えが完全に説かれた経典に依拠して、意味のはっきりしない教説に依拠しない)は、3項目めに吸収してしまえそうです。
意思決定の三依
だいぶ意訳を重ねてしまいましたが、せっかくですので「意思決定の三依」としてまとめておきます。
- 【意図に依る】 言葉や事象の奥にある意図や意味を汲む。目的に立ち戻る。
- 【状況に依る】 静的な知識だけでなく、動的な知恵を働かせる。 決めつけず曖昧さに耐える。最善のバランスを追求する。
- 【根拠に依る】 個人の見解に依存しない。科学的な証拠、哲学的な論拠で根拠づける。