楽観度テスト
心理学者のマーティン・セリグマン教授は、楽観度を測定するテストを開発しています。受検者は、列挙されるできごと(良いものも悪いものもあります)にどう感じるかを回答していきます。教授の著書『世界でひとつだけの幸せ―ポジティブ心理学が教えてくれる満ち足りた人生』には、二者択一問題32問からなるシンプルなテストがありますので、興味のある方は書籍を見てみてください。
わたしが興味をひかれたのは、楽観度を測る2つの切り口でした。
一つめは「永続性」です。あるできごとを永続的なものと捉えるか、それとも一時的なものと捉えるかということ。楽観的な人は、良いできごとを永続的なものと捉え、悪いできごとは一時的なものと見なします。悲観的な人はその逆。良いできごとは一時的なものに過ぎず、悪いできごとはいつまでも続くと感じます。
二つめは「普遍性」です。楽観的な人は、良いできごとに普遍的な原因を見い出す一方、悪いできごとに対しては、その局面に固有の原因があったのだと考えます。悲観的な人は、やはりその逆です。良いできごとがあってもその局面かぎりだと思うし、悪いできごとには普遍的な原因を感じます。
教授はこう書いています。
「永続性は時間にかかわる事柄で、普遍性は空間にかかわる事柄である。」
うまく直交しそうな切り口ですので、マトリクスにしてみましょう(下図)。
普遍的
┏━━━━━┯━━━━━┓
┃いまだけ いつでも┃
┃どれでも │ どれでも┃
┃ ┃
┃ │ ┃
一┃ ┃永
時┠ ─ ─ ┼ ─ ─ ┨続
的┃ ┃的
┃ │ ┃
┃ ┃
┃いまだけ │ いつでも┃
┃これだけ これだけ┃
┗━━━━━┷━━━━━┛
特殊的
図:できごとの原因を解釈する2つの切り口
(書籍では「特殊的」ではなく「特定的」という訳語が使われています)
できごとの原因は1つではない
上図のように整理してみると分かりやすいですね。楽観的な人は良いできごとが起きたら右上に、悪いできごとについては左下に目を向けます。悲観的な人の反応は真逆です。
しかし楽観的であれ悲観的であれ、それが度を超してしまうと合理的な態度とはいえなくなります。マトリクスのどこかのマスだけに原因を求めることはできないからです。
あるできごとには、常に複数の原因が関与しています。これは(西洋的な)問題解決の方法論でも前提となっていますが、仏教の因縁生起という考え方によってよりすっきりと説明できます。
あるできごとには、つねに直接的な原因(因)と条件(縁)が必要です。成功者(企業)の成功要因を分析して「因」を揃えたとしても、「縁」がなければ、その成功は再現できません。他人の成功だけでなく自分(自社)の成功も同じことです。
上のマトリクスを、敢えて「因」と「縁」で色分けしてみるとこうなります。
普遍的
┏━┯━┓
一┃縁 因┃永
時┠ ┼ ┨続
的┃縁 縁┃的
┗━┷━┛
特殊的
良いできごとにも、悪いできごとにも、かならず「因」つまり普遍的・永続的な原因、言い換えれば「構造的な原因」がある。同時に「縁」つまり一時的・特殊的な原因、言い換えれば「一回性の原因」もある。そう考えれば、過度に悲観的に、あるいは楽観的に、ならずにすむのではないでしょうか。
そして、これは単にメンタルヘルスの話だけではありません。問題解決に立ち向かう際にも、忘れてはいけない心得だと思います。