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コンセプトノート

122. 布石を打つ

趣味と仕事の好循環

昨年、ご著書の『XOOPS入門 ―― ひとが集まるWebをつくる。』という本を起-動線ユーザにプレゼントしてくださったsakaikさんこと坂井さん。XOOPSのみならず、いろいろな無償の活動が(有償の仕事を含む)他の活動にうまくリンクしているなあという印象を持っており、仕事のポートフォリオを考える上で一度話を聞きたいと思っていました。
今回@IT自分戦略研究所向けのコラムに登場してもらえることになり、じっくり話をおうかがいする機会を得ました。詳細はそちらのコラムをお読みいただくとして、こちらではコラムに書き切れなかった話を少々。

個人としてのR&D(研究開発)

趣味やボランティアワークが、間接的ではあっても、有償の仕事のきっかけになることがあります。経営者や自営業者などご自分で事業を回されている方はとりわけ思い当たることが多いと思います。
ただ、モトを取ってやろうと思うとその活動自体つまらなくなってしまうし、機会を活かそうという意図がなければ、つながるものもつながらない。そのあたり、どのように構えていればいいのでしょうか。

チャールズ・ハンディは仕事のポートフォリオを大きく有償の仕事と無償の仕事に分けた上で、無償の仕事を家内仕事、研究活動、奉仕活動の3つに分類しています。この中で、もっとも有償の仕事につながるのは研究活動、つまり個人的な興味の追及です。
この「研究活動」について、わたしは大企業における基礎研究のイメージを持っています。基礎研究というものは、以下のような性格を持っています。
・何らかの形で企業理念に沿った研究である
・短期的な見返りを測定することは難しいが、長期的には投資に見合う果実をもたらす
・当初の目的から逸れたように見えた結果が成果につながることもある

一個人として仕事のポートフォリオを組むならば、企業の基礎研究に相当すること、つまり数年後のメシの種を育てることが必要です。それはハンディ氏のカテゴリでいえば「研究活動」に入るでしょう。

将来のために現在活動するわけですから、ひらたくいえば布石を打つということです。ではどのように布石を打てばいいのでしょうか。

布石は打っておしまい、ではない

坂井さんに、色々な活動が絡み合って発展してきた経緯を振り返っていただく中で浮かび上がってきたのが、「継続」というキーワード。意識的に継続してきたことが、結果的に他の活動にリンクしていったということです。

ちなみに坂井さんに「いま意識して継続していること」を聞いてみたら、本業がらみのことや最近ハマっている歌舞伎鑑賞などのほかに、「ここ数年、地元の花火大会の協賛をしています」という面白い答えが返ってきました。ひとりカンパニーでそういうことをしている人は珍しいですよね。しかも、お義理程度ではなく、町内で配られるチラシ上で会社名がちょっと目立つほどの額を、財政的に苦しいときでも継続してきたとのこと。

地元で仕事をしているわけでも無いのになぜ?と聞いてみました。主には、ひとりカンパニーであっても、お世話になっている地域社会に貢献しようというコミットメント。でもその他にも、「万が一、地元で営業しようと思ったときに『あ、花火大会を応援していた会社だな』と思ってもらえるかもしれないじゃないですか(笑)」とおっしゃっていました。

面白いですね。もし広告として考えればとても割に合わない話です。しかしもし、万が一地元の仕事をする機会があり、万が一上記のような形で覚えてくれている潜在顧客がいたとしたら、そのとき得られる無形の信用は、一過性の広告では得られない種類のもの。

たとえ坂井さんにそのおつもりは無くても、これもまた布石には違いありません。