生涯学習を促す習慣的行動
彼はすでに二十歳台で起業家として立ち、三十歳、四十歳台でビジネスリーダーとなり、五十歳台ではメージャーリーグ級企業の変革者に成長している。(略)しかしその段階にとどまらず、六十歳台には著述家として、七十歳台にはフィランソロピスト(慈善家)として、八十歳台には教育者として、さらに成功を収めるキャリアを築き上げた。
ジョン・コッターが『企業変革力』でこのように描写するのは、松下幸之助です。
ドラッカーの著書に、以前は15歳くらいまでに手に職をつければその職人として一生暮らしていけたという記述があったように記憶しています。19世紀終盤に生まれた松下幸之助も、小学校を中退して9歳で丁稚奉公に出ました。そのまま奉公先に就職してもおかしくなかった彼に、上述のようなキャリアをたどらせたものは何か。
生涯にわたる学習です。コッターは松下のような生涯学習を続けたリーダーの行動習慣を『比較的簡単なもの』として、次のようにまとめています。
- 【リスクを負う】 自分自身を自らの快適ゾーンから敢えて踏み出させる意思
- 【謙虚な自己認識】 過去の成功と失敗、とくに後者について正直に内省する態度
- 【他人から意見を求める】 積極的に他人から情報やアイディアを収集する態度
- 【注意深く傾聴する】 他人の発言に耳を傾ける能力
- 【柔軟である】 変化の激しい状況において、個々人の自主的行動とさまざまな選択を許容する柔軟性を備えている
- 【新しいアイディアをオープンに受けとめる】 オープンに、能動的に人生を受けとめていく積極性
生涯学習を促す習慣的行動 – *ListFreak
このリストを読んでいると、コッターのいう学習はいわゆる「お勉強」ではなく、経験から学ぶ行為を指していることがわかります。
学びは現場9割
経験から学ぶといえば、このリストが連想されます。
- 学びの70%は、実生活や職場での体験、仕事、そして問題解決によってもたらされる。どのような学び(学習と成長)の計画においても、これがもっとも重要な側面である。
- 学びの20%は、手本となる人々からフィードバックを受け、彼らを観察し、彼らとともに行動することによってもたらされる。
- 学びの10%は、正式なトレーニングによってもたらされる。
学びの70/20/10モデル – *ListFreak
学びの70%は現場経験から。現場を学びの場として捉える人が、10%の機会のみを学びの場として捉える人と比べて大きな成長を遂げるのも当然です。
とはいえ現場でこのような習慣を保つのは、コッターが言うほど簡単とは思えません。たとえばわたしの目下の現場でいえば、毎回の研修で参加者に書いていただくフィードバック。謙虚に・オープンに読めればよいのですが、なかなかそうはいかず、心がざわつくのがイヤでつい後回しにしてしまったりします。
すべては学習の機会。しばらくはそう唱えつつ先述のリストを眺めて、よい学習習慣を身につけたいと思います。