よい意志決定は、よい原則から導かれます。
実際、多くの方は、重要な局面で自分がしたがうべき
原則を思い出すきっかけとなる言葉をお持ちです。
いわゆる「座右の銘」です。
したがうべき原則を持てば、迷いは減ります。
このことからもたらされる安心感は、とても強いものです。
そのため、ともすると「この原則にしたがってさえいれば
間違いない」という考え方に誘惑されます。この心理は
いわば「原則への逃避」と呼ぶことができるでしょう。
実際には思考停止にすぎない、そのようなかたくなな
原則主義は、一面的な判断に陥るリスクを内包しています。
自分が原則を貫く満足を得る対価として他人に犠牲を強いたり、
いま原則を押し通すことで、将来により大きな
矛盾の種を蒔くような結果になりかねません。
原則は守るために育てるものだが、それに依存しすぎてはいけない。
つまり、時々は妥協せざるを得ない局面もあるということです。
では、この兼ね合いをどう図るべきなのでしょうか。
敬愛するチャールズ・ハンディは、「妥協」の重要性を
こう説いています。
「原則というものはすべて妥協によって、
より大きな原則に役立ちうるのだ」
(『パラドックスの時代』p143)
妥協とは、単に原則をまげることではない。
より大きな原則に従うために、
小さな矛盾を解消する手段なのだ。
ハンディの言葉から、その知恵を読み取ることができます。