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コンセプトノート

715. 勇気ある良心

一連の管理職研修の報告会を兼ねて、社長・役員の皆さんとの議論の機会をいただきました。これまでの組織運営に疑問を呈するような差し出がましい提言をせねばならず、最悪の展開をいくつか予想して臨みました。無事に終了したものの、終わったらぐったりしてしまいました。

そんなことがあったせいか、帰り道に流し読みしていた本のある項目に目がとまりました。組織のメンバーがリーダーに異を唱える難しさについて語っている箇所です。(1)

『模範的フォロワーが、リーダーの間違った決定にノーを言うためには、「勇気ある良心」が必要になる。これは、事の善悪を判断する能力であり、自分が信じる道に向かって積極的な手段を講じていく不屈の精神でもある。』

「勇気ある良心」を発揮するためには、次の10のステップがあるとのこと。仕事柄、説得のステップのようなリストはときどき見かけますが、ここまで丁寧に書かれているリストは初めて見ました。要約・意訳を付けて引用します。

  1. 前向き思考を心がける …… リーダーの行動を肯定的に解釈する
  2. 事実を収集する …… リーダーも同じ事実を把握しているかを確認する
  3. 態度を決める前に、賢明な助言を求める …… 信頼できるメンターなどの意見に耳を傾ける
  4. 忍耐心を養う …… 「孤独な道」を歩むことになると覚悟する。小さな問題で異を唱えるなど練習をする
  5. 組織の枠内で活動する …… 不一致を発表する際の、組織の規範や慣習を確認し、できるだけそれに沿う
  6. 注目を集める立場づくりをする …… 組織に対する自分の貢献を示す
  7. 自分の意見の良さを納得させる …… 自分の見解の裏付けとなる事実を示せるようにする
  8. 集団で行動を起こす …… 同じ意見の人たちを集め、声を合わせて訴える
  9. リーダーが反発したら、より権威ある人物、機関の助けを仰ぐ …… 組織の上下関係を乱す、リスクを伴う手段であると覚悟する
  10. お金と心にゆとりを持ち、行動の幅を広げる …… 内部告発者は結果として精神的にも経済的もボロボロになることが多い。最悪の事態に備えておく

「勇気ある良心」を発揮してリーダーの間違った決定にノーを言う10のステップ*ListFreak

どのステップで実際にノーを言うのかは書かれていません。おそらく、事の重大性によるのでしょう。軽く異見を唱えるくらいであれば、2まで確認したうえで言ってもよい気がします。内部告発ともなると、やはり10まで踏むべきでしょう。

ざっと読んだ段階では、「勇気ある」というよりも「慎重な」、いっそ「臆病な」良心ではないか、という印象を持ちました。しかしじっくり読んでみると、どのステップも欠かすべきではないと思えてきます。これが正当な「勇気ある」行動ならば、これらのステップを飛ばすのは「無謀な」行動ということになります。

勇気というと、どこか「当たって砕けろ」「一か八かに賭ける」といったニュアンスを感じていましたが、このリストから立ち上ってくるのは、やるべきことを決然としてやりぬく覚悟です。

(1) 読んでいたのは、グロービス『【新版】グロービスMBAリーダーシップ』。ロバート・ケリー『指導力革命―リーダーシップからフォロワーシップへ』からの引用でしたので孫引きです。