「転機収集家」を自任しています。ですので転退職のお知らせをいただくと、お互いの都合が合えばできるだけお会いして話をうかがっています。
今週は、退職のごあいさつをいただいた年若の友人とランチをしました。転職だと思い込んでいたのですが、独立するとのこと。
「ほんとうはネタをちゃんと見つけてから退職したかったんですけどね」
「でも退職しちゃった、と」
「頑張らなくても成果が出るようになってきてて、これはちょっとぬるま湯かなと」
「○○(上位職)を目指せばいいじゃない」
「『まだ早い』って言われちゃうんですよ(笑)」
……細かい事情を勘案すると、ハードワーカーのAさんが足踏み感を感じるのも無理はなさそうです。「卒業」は妥当な選択に思えました。
個人的なつながりで引き合いもあったので、まずはフリーのコンサルタントとして独立する決断をしたとのこと。ただ顧客が1社では食べていけないので、もう少し顧客を広げて、いつかは事業を興したい。そう言っていました。
「独立しちゃって良かったんじゃないの」
「そうですかね…(不安そうな様子)」
「僕はAさんと違ってなりゆきで独立しちゃったクチだけど、今でも不安ですよ。夜とか、独り酒飲んじゃったり(笑)」
「え、本当ですか」
「もちろん。いいご縁をいただいてここまで来れたし、あと3年は大丈夫だとは思うけど、その先に仕事があるかなんて分からないよ。何しても食っていけるぞと思う日もあれば、何してもダメかも…と思う日もある。でも、これは『健全な不安』だと思ってる」
3年先が読めないという点では誰だって同じような状況だと思いますが、それをリアルに感じるのは難しい。少なくとも独立する前のわたしには、難しかった。
世「本来感じるべき不安を、会社で働いていた間は感じずに過ごしてこられた。これはとてもありがたいことなんだけど、恐さもあるよね」
A「そうですね、『このぬるま湯感のまま、そんなに頑張らなくてもリタイアまで逃げ切れちゃうんじゃないか』みたいな(笑)」
世「Aさんは『起業ネタを見つけてから退職しよう』と思いつつ、結局それを待たなかった。これがいい決断だと思うんですよ、無責任な言い方だけど(笑)。今回の退職は、自ら変化し続けるぞという宣言みたいなものですよね」
A「まあ、そうありたいとは思いますけど」
世「少なくともネタが見つかる確率は上がると思いますよ。必死になりますから」
Aさんの場合は年齢も若く、扶養する家族もおらず、独立しても発注してくれそうな見込み顧客をもっていました。もちろん本人にしてみれば大冒険であり不安も大きいと思いますが、現在の「よい会社」で漠然とした不安を抱えているよりは、健全な不安だと思います。
では何をもって「健全な不安」と呼ぶのか。わたしの今日現在の定義はこんな感じです。
健全な不安は、行動を促す。行動が「変化しない不安」を駆逐するので、一定レベル以上には増大しない。
そうでない不安は、籠城を促す。すると不安が不安を呼んでしまう。