たとえば、こんなシーンで考えてみます。
競合が新製品Aを発表して一ヶ月、売れ行きは好調のようです。メンバーが集まって新製品Aについての考えを自由に述べ合うことになりました。
さて、何を述べればいいのでしょうか……?
自由に考えろといわれると、逆に難しく感じるものです。競合の新製品Aについて考えるとは、いったい何を考えることなのでしょうか。それを明らかにするために、いくつかの「考え」を例に挙げてみます。
Xさん「新製品AはAだと考えます」(考えていなさそう)
Yさん「新製品Aは宇宙だと考えます」(何かを考えていそうだが、わからない)
Zさん「新製品Aの優位性は○○だと考えます」(考えていそう)
実務の場でXさんようなオウム返しをする人はいないでしょう。つまり考えるとは、すくなくともAとA以外の何かを関係づけることだといえます。
Yさんが「何かを考えていそう」と思えるのは、AとA以外の何か(宇宙)を関係づけているからです。「Aはそれだけで完結する世界観を持っているという比喩として宇宙と言った」といった補足があれば、Yさんの発言の意味がわかります。ただおそらくメンバーは、Yさんの「考え」を聞いたとは思えないでしょう。宇宙という言葉はAの描写であり、言い換えに過ぎないからです。
XさんとYさんの発言から、Aについて考えるとは「Aと、Aの単なる言い換えではない何かを関係づける」ことといえます。三者の中ではもっとも「考えていそう」なZさんの発言が、それをうらづけています。
では、われわれが仕事や生活において「考える」とき、何と何を関係づけているのでしょうか。それは、次の三つです。
関係づけ思考の三か条
1. 目的と手段の関係
2. 全体と部分の関係
3. 結果と原因の関係
考えるとは、この三か条に含まれる六要素のどれか(たとえば目的)と、その相手の要素(たとえば手段)とを関係づけることです。冒頭のシーンでいえば、この三か条を手がかりにして次のような問いを生み出せます。
1.新製品Aの目的は何か?(手段から目的を関係づける)
2.新製品Aの拡販のために取られた手段は何か?(目的から手段を関係づける)
3.新製品Aと競合し得る製品は何か?(部分から全体を関係づける)
4.新製品Aの優位性は何か?(全体から部分を関係づける)
5.新製品Aがわが社にもたらす影響は何か?(原因から結果を関係づける)
6.新製品Aが売れ行き好調な原因は何か?(結果から原因を関係づける)
この三か条は、自分の考えを述べるときだけでなく、相手の考えを理解するとき、さらには場の考えを整理するときにも使えます。また、まだ考えられていないことを探すのにも有効です。