ていねいに分けて、一度にひとつずつ
『たのしい編集』という本で、校正について書かれていました。校正とは、書籍の原稿を出版に向けて最終化していく際のさまざまなチェック作業で、ただ誤字脱字を直すだけではありません。著者は以下の5つを主な視点として挙げています。
- 【事実関係】内容の真偽について確認する
- 【表現】文章全般にわたり、文体や言いまわしなどを検討する
- 【文字校正】「読む」のではなく「見る」ようにして文字の校正を行う
- 【用字用語】編集段階で決めた〈仮名づかい〉の方針にのっとっているかを確認する
- 【度量衡や通貨、数値】単位(例:ポンドかグラムか)や数字(例:漢数字か算用数字か)の表記を確認する
素読み(校正)の5視点 – *ListFreak
わたしのような素人が「校正する」という一つの動詞ですませるところを、プロはさまざまな作業(視点)に分解しています。そしてこのように述べていました。
『もっとも大切なのは「一度にさまざまな視点から校正しない」ことだ。』
わたしも文章を書きますし、見直しもします。しかし、わたしがメールを「見直す」程度の仕事ぶりではとても校正にはなりません。わたしの「見直し」とプロの「校正」の差を考えると、たしかな仕事をする上で重要なのは次の2点と言えそうです。
- 一つの仕事を、順にこなしていけば全体が終わるような部分に分けること。
- 分けた部分を一つずつこなしていくこと。
分解掃除(ブレイクダウン&ビルドアップ)
タスクは具体的な行動レベルに分解し、その行動レベルでタスクリストを作る。これは多くの仕事術が共通に指摘している点でもあります。それとは別に、一つのタスクの中でやっていることも「分解掃除」してみるのも、生産性向上には有効な策だと思います。
ひとつの動作を分解(ブレイクダウン)し、油を差してから組み上げ(ビルドアップ)する。これが「分解掃除」のイメージです。
たとえば、メールを「見直す」とき。なんとなく読み返すよりは「論理チェック→表現チェック→誤字脱字チェック」などと分解してさっと三周したほうが、しっかり見直せそうです。三周は面倒ですが、もしかしたらチェック対象がはっきりする分早く終わるかもしれません。一周であっても、この3つをチェックするという意識をもって見直せば、漫然と見直すよりは楽で確実そうです(さっそくこの文章を書き終えたらやってみます)。
分解掃除の小さな例を一つ思い出しました。水泳が趣味なのでタオルで体を拭く機会が人よりすこし多いと思うのですが、背中とか脚とか、拭き残してしまいます。気にするほどのことではないにせよ、冬なんかにはちょっと不愉快になります。
あるとき、人生も半分を過ぎて体一つ満足に拭けないとは情けないと思い立ち、体の拭き方を研究しました。研究といっても、それまでの動作を分解し、手順を見直して、それをスキップせずにやるだけです。数回で完了する研究ですが、考えずにやっていたン十年間と比べると、成果の差は歴然です。「体を拭く」だって分解掃除できるのです。
部屋を掃除する、新聞を読む、歯を磨く。分解掃除の対象はたくさんありますね。