先日、未来学者アルビン・トフラー氏のインタビューを読みました。思い切って要約すれば、
『貨幣に集約されてきた「富」の概念が、また多様化していく』
と言っているのだと、理解しました。貨幣の代替物(ポイント、マイレージなど企業通貨、や地域通貨)が増えていくだけでなく、モノとモノ、仕事と仕事の交換も容易になっていくという示唆があります。この背景には個人が生産者兼消費者(プロシューマー)化していくという考え方がありますが、今日はここを省略し、以下について考えてみます。
金融資産に加えて、何を人生の富と考えることができるか。
つまり、何があることをもって豊かというのか。
挙げていけばキリがないし、かといって過度にまとめてしまっても抽象的でつまらない。そこで13個挙げることにします。13あると、毎週1テーマに集中していけば1年間でちょうど4周できます。これはご存じ「ベンジャミン・フランクリンの十三徳」のアイデア。考えてみれば、フランクリンは最初のLifeHackerなのかもしれません。
金融資産 ― 蓄積と交換が容易な富
これを挙げないわけにはいきません。
健康 ― 豊かな人生の条件であり、同時に目的でもある
健康とは不思議なもので、富を楽しむための前提条件のようでもありますが、同時に精神的にも肉体的にも健やかに過ごすこと自体が人生の目的でもあると思うときもあります。また継続的な維持活動が必要なところも、「資産」と呼ぶにふさわしい。
伴侶 ― 互いを、社会を、支える基盤
精神的にも経済的にも、支え合う伴侶は、人生の富でしょう。これも健康同様、継続的な維持活動が重要 。
子(孫) ― 未来へのかけはし
存在自体が、育児経験が、また社会のこれからを考えるきっかけを与えてくれることが、すべて富であると考えます。
志 ― 生涯を賭けた挑戦
逆説的ですが、一代では成就しないほど大きな望みを持ち、その実現に邁進することが、いつ死んでもいいと思える心構えの条件ではないでしょうか。そういったものを見つけられることも、また挑戦し続けられることも、富であると考えます。
見識 ― 自分の言葉を持つ
受け売りでない、自分なりの意見を持っている状態。これも重要な資産であり、資産形成の対象として意識したいと思います。
自由時間 ― 重要なことに時間を配分できる状態
大事だと思うことに時間を振り向けられること。これも富ですね。
友情 ― 損得を超えた信頼の絆
堺屋太一氏の言う「好縁社会」を支えるのは、このネットワーク。
職業スキル ― 世の中に役立つ力
仕事とは、典型的には、この富を貨幣と交換しています。しかし考えてみると、貨幣を介さなくても交換は可能。時が経つと減価するので継続的な維持・増進活動が必要。
仕事のネットワーク ― 自分の価値を認めてくれる顧客・仲間
自分をよりよく生かしてくれる環境がある。これも大事な富だと思います。
事業 ― 社会貢献の装置
社会を豊かにする、持続的な組織活動。これを興し、遺すことができたら大きな富です。
思想 ― 後世に遺せる無形の富
「見識」を富に数えました。それが昇華し、普遍性が備わり、人に認めていただける何かになるとすれば、これは素晴らしい富です。
姿勢 ― 死後、自分がどのように思い出されるか
最後の3つは、期せずして内村鑑三氏の『後世への最大遺物』と重なってしまいました。事業を興せなくても、思想をまとめられなくても、誰でも遺せるものは何か。氏は「勇ましい高尚なる生涯」であると、言っています。
壮大なリストになってしまいました。せっかく作ったので、せめて4周はし、少しなりとも資産形成を意識していきたいと思います。