話し合いの中で、どうにも不合理、あるいは不規則、さらには不可解な発言をぶつけられることがあります。わたしの仕事でいえば、多いのはやはり講義の場です。次は提案の場でしょうか。リアルタイム性の高い現場でそういった発言をどう受けとめ、乗り越えていくか。わたしなりのやり方をメモします。
- 【目的】相手には固有の利害や制約があり、自分と異なる目的を持っている
- 【事実】相手と自分には、知っている(と思っている)事実に食い違いがある
- 【前提】相手がその事実を解釈する前提(価値観、善悪)が、自分とは異なる
合意形成のために確認すべき3つの相違 – *ListFreak
まずは発言の【目的】を考えること。たとえば1日研修の冒頭、今日1日への期待を聞くと「早く帰りたい」と言い放つ人がいます。わざわざそう話すからには、それなりの目的があります。なぜそう思うのかを聞いてみたり、その会話を周囲がどう聞いているのかを観察すれば、だいたいの目的は察することができます。
多くの場合、「早く帰りたい」という発言の目的は「キャラづくり」です。たとえば「研修ぎらい(だけど実務はバリバリできる)」という自分を場に認めさせたいのです。そういう気持ちはわたしにもあるので、共感できます。共感できれば尊重もしやすくなります。
そういう人は自負するだけあって実力も高いことが多いので、実務の中で今日の研修テーマに関する能力を発揮された経験談などをお話しいただくようにします。相手の目的を理解し、尊重していることが伝われば、ほとんどの場合はこちらの目的(学びの場をつくること)も尊重し、協力してくれます。
次に、【事実】の食い違い。お互いに知っている事実に違いがあれば、当然ながらその主張も違います。こちらが多くを知っている場合もあれば、逆もあるでしょう。不合理な発言については、その根拠を、なかでも現状や事実に対する認識を、確認する必要があります。本人が事実と見なしているものが意見にすぎない場合もあるので、ある程度たんねんに聞かなければなりません。
見ている事実は同じなのに意見が違うとしたら、それはその事実を解釈する基準(価値観、倫理観など)、つまり【前提】が違うからです。前提の違いを考えるときにわたしがよく思い出すのは次の3か条です:
- 「結果重視」と「プロセス重視」
- 「数字重視」と「人間関係重視」
- 「直観型」と「熟考型」
話が合わない人にありがちな価値観のズレ – *ListFreak
ビジネスは結果がすべてという人もいれば、結果はコントロールできないのでプロセスのよし悪しをこそチェックすべきという人もいます。
相手の発言が不合理に聞こえる場合、この前提の違いが理由であるケースが一番多いように思います。こういった前提を置いていること自体、自分も相手も意識していない場合が多いので、意図的に探しにかからないと見つけられません。
前提は文字通り「前提」、つまり「議論するまでもないこと」なので、お互いに変えづらいものです。どちらの前提を採用すべきかで争うよりは、どちらの前提に立っても是とできるような答えがないかを考える方が、良い結果が出ることが多いように思います。