数年前に友人と交わしたメールのことを、ときどき思い出します。
その友人は、当時、義理のお父さまのお加減が悪く、
毎週末東京から飛行機と電車を乗り継いで手伝いに通っていました。
仕事も午前様が当たり前のような状態。
思い出すのは、「大変だね」としか書けなかったメールへの
返信の中に見つけた友人の言葉です。
たしかに大変だけど、
できることしかできないから。
自分の時間がほとんど取れない状態で
いろいろ不満もあろうと思っていたので、
意外なほど淡々とした返事にちょっとびっくりしました。
しかし同時に、以前から彼女に感じていた「強さ」「前向きさ」が、
目の前の難事の山を淡々と崩していく
その姿勢に根ざしていることに気がつきました。
わたしなどはつい「やりたいのにできない」ことが不満で、
時間が、スキルが、お金が、足りない足りないと言ってしまいます。
できないことをやろうと思うがゆえに
わざわざ不満を産み出しているようなものです。
かといって、目標を下げたり、流されるままにしたほうがいい
というつもりもありません。
高い目標を掲げることは、
自分を伸ばそうとする意図を忘れない限りは
健全で、むしろ必要なことだと思います。
しかしそれが行き過ぎて、
できないことをやろうとするあまり人生に不満を持つ
ようになってしまっては、本末転倒なのではないかということです。
いまも「野望」から「日々の雑事」にいたるまで
「やりたいのにできない」状態のわたしにとって、
「できることしかできない」は、ふっと視点を変えてくれる
大事な言葉です。