目標設定よりもすぐれた、変化を起こす方法
目標を特定するよりも、ただ意識し続けるだけのほうが、はるかに大きな変化を起こせる。『死ぬまでに知っておきたい 人生の5つの秘密』という本で、著者は自らが実施した実験を紹介しています。
数百人を対象にしたこの実験では、まず各自が人生において起こしたい変化(ダイエット、運動、食生活、ワークライフバランスなど)を明確にします。そのあと、2グループに分けて異なるアプローチで変化を起こすことに挑戦しました。
第1のグループは、明確な目標を立て(週に○回○をする、など)、毎週それを見直します。第2のグループは、そういった具体的な目標は立てません。その代わり、起こしたい変化をカードに書き、携帯し、毎日何回も眺めます。自己否定せず、自分が望む変化を意識するよう指示されました。
12週間後。どちらのグループも成長を果たしていたものの、第2のグループは第1のグループの3倍もの変化を起こしていたそうです。
(原著も眺めてみましたが、この実験には引用元がなく、追試あるいは似たような実験を見かけたこともありません。ですので真偽の判断は保留しつつ、これは一般的な傾向だとして先に進みます)。
ビジョンに焦点を当て、手段から自由になる
具体的な目標を立てるよりも、その目標が達成された状態をカードに書いて持ち歩くというシンプルな方法のほうが、効果がはるかに高い。その理由を、著者は「あまり具体的に目標を設定しすぎると、それをちゃんと実行できなかったときに、つい自分を責めてしまうから」だと推測しています。
目標には成果目標(達成時の状態。「体重○キロ減」など)と、行動目標(そのために起こす行動。「毎日○キロ走る」など)があります。引用元の文章から察するに、どうも第1のグループは行動目標を立てていた様子です。第2グループは成果目標を飛び越えて、ビジョン(変化を起こした結果として最終的にこうありたいというイメージ。「体重のコンプレックスから解放された自分」など)を書いて持ち歩いていたようです。
行動目標は、具体的です。しかし手段を制約します。成果目標を達成するためにとり得る行動は、実はたくさんあるはずなのに、行動目標を立てた以上、特定の行動が要求されます。あえて行動目標を持たずに成果目標だけを持っていれば、手段の自由度は広がります。「体重が○キロ減りさえすればいい」と考えればいいわけですからね(ただし、そのつど最善の手段を考えなければならないという苦しさもあります)。
まして第2グループのように、成果にせよ行動にせよ中間目標を持たず、ビジョンだけを描いていれば、さらに手段から自由になれます。「体重のコンプレックスから解放されさえすればいい」と考えれば、問題はもはや体重ではなく体重に対する自分の解釈になります。
あることがらに意識を向けると、それ関連する情報が目に飛び込んでくるようになる。これは「カラーバス効果」「現役効果」などと言われますが、これと同じようなメカニズムが目的と手段のあいだにもありそうです。最終的に起こしたい変化に意識を向けると、そこに至るさまざまな手段を思いつけるようになる。そのほうが手段(行動)を決めてしまうよりも挫折しづらく、効果も高いのでしょう。