「我々の仕事では『今夜調べて翌朝に回答します』とは言えない」
ファシリテーターやコーチの集まりに参加しました。上記の発言は主催者の言葉です。
会議や討論の目的は結果を出すことだけではありません。議論を尽くすプロセスこそが目的であるケースもあります。そういう場では「正しい答えは何か」よりも「誰がどういう信念を持っているか」を共有することの方が重要です。
問いを与えられて自分なりの答えを出さなければならない。考えてみれば誰の仕事にもそういう側面はあります。そこで、どういうときにそういう「難しい即答」が求められるのかを考えてみましょう。
一つの軸は、答えるまでに要求される時間。上記のように即答を要求される問題と、時間を掛けて熟考して回答してよい問題があります。
もう一つの軸は、問題の種類。ここでは「記述問題」と「規範問題」という種別で考えてみます。
「記述問題」とは、現在、過去、または未来の事柄(その真偽や正確さ)に関する記述・説明を求めるような問題です。「規範問題」とは、何をすべきか、何が正しくて何が間違っているか、何が良くて何が悪いか、といった倫理上の提言を求めるような問題です。(p26)
『クリティカルシンキング練習帳』
この2軸で「問い」を分類してみたのが下のマトリクスです。それぞれの象限にラベルを貼ってみました。
┌───┬────┐
規│審問 │ 判決 │
範│ │ │
├───┼────┤
記│クイズ│リサーチ│
述│ │ │
└───┴────┘
即答 熟考
即答が要求される記述問題は、知っている人勝ちの「クイズ」のようなものです。熟考してもよい記述問題は「リサーチ」仕事のようなものです。熟考してもよい規範問題に答えることは、「判決」を下すことになぞらえられるでしょう。
冒頭の発言で話者が念頭に置いていたのはマトリクスの左上、「即答が要求される規範問題」です。ここでは「審問」と名付けてみました。
「審問」に答えることで、信念が試されます。人格が露わになります。「審問」は、このマトリクスの中では回答能力を鍛えるのがもっとも難しい問い掛けです。
「審問」に対する答えの基準は「自分はどう思うか」「自分は何を良いと信じるか」「自分はどうありたいと思っているか」です。外部の情報源にもアドバイスにも頼ることができません(し、そうすべきでもありません)。したがって自分なりの判断基準を持っておけばよいのですが、それが容易ではありません。
どのようにして自分なりの判断基準を明らかにしていけるか、それを次回に書きたいと思います。