汎用的な、問題解決のサイクル
ほぼすべての仕事で、問題を見出し、取り組み、解決に導くことが求められます。仕事柄、そして個人的な興味から、多くの問題解決の方法論を学び、そして試す機会がありました。
実のところ、現在ビジネスの世界で共通言語として用いられている問題解決の方法論にはそれほど多くのバリエーションがあるわけではありません。わたしの知る限り、その源流は20世紀初頭のプラグラマティズムにあります。たとえばアメリカの哲学者ジョン・デューイが1938年に著した”Logic: The Theory of Inquiry”などは、現代のビジネスにおける問題解決の方法論の原型といってよいのではないでしょうか。
【注】和訳あり。ジョン・デューイほか『世界の名著 48 パース/ジェイムズ/デューイ』(中央公論新社、1968年)
もちろん、用途に応じてさまざまなバリエーションが開発されてきました。創造的な問題解決のために問題の発見に重点を置くアプローチ(例えばブレークスルー思考)や、問題の原因に深入りせず解決を志向するアプローチ(例えばソリューションフォーカス)などがそれにあたります。
とはいえ、その核にあるものはそれほど変わってはいません。次に示すのは、そういった代表的なバリエーションを取り込んだ汎用的な問題解決のステップです。
- 【めざすべき目的の再定義】 そもそも何がどうあるべきなのか?
- ステップ1 [将来像] ありたい姿は何か?
- ステップ2 [価値観] なぜ、その将来像なのか?真に重要なのは何か?
- ステップ3 [目標] 具体的な到達点はどこか?
- 【解くべき課題の定義】 その目的と現状とのギャップの本質は何か?
- ステップ4 [分析] 目標と現状とのギャップはどこにあるのか?
- ステップ5 [推察] そのギャップは何によって生じているのか?
- ステップ6 [課題] 目標達成のために乗り越えるべき壁は何か?
- 【解決策の実行と学習】 その課題をどう解くか?何を学んだか?
- ステップ7 [選択肢] 課題解決のために何ができ得るか?どれを選ぶか?
- ステップ8 [実行] どうやるか?
- ステップ9 [学習] 何を学んだか?
汎用的な問題解決のサイクル – *ListFreak
問題は目指すべき目的の再定義によって常につくり出せるという立場から、「問題解決のサイクル」という名前を付けています。(問題解決研修の副読本として使用している解説書を、booknestというオンライン書店で頒布しています)
【注】堀内 浩二 『問題解決クイックガイド 行動を成果につなげる9つのステップ』(booknest、2010年)
普天間問題:どこに問題があったのか
今週、鳩山首相が辞意を表明しました。ご自身は、辞職にいたる原因の一つとして、いわゆる普天間問題を挙げておられました。
実のところこの問題にはまったく詳しくないのですが、普天間か辺野古かという選択が論じられるためには前段階として何が押さえられていなければならないのか、この枠組みで整理してみようと思い立ちました。
ステップ1 [将来像] ありたい姿は何か?
東アジアの治安が(軍事的な抑止力によってであっても)保たれる
ステップ2 [価値観] なぜ、その将来像なのか?真に重要なのは何か?
現在のところ、軍事力は治安維持に必要。
ステップ3 [目標] 具体的な到達点はどこか?
治安維持効果を損ねず、関係者(政府・軍・地域住民などを含む)の満足を得られるオプションを見出す
ステップ4 [分析] 目標と現状とのギャップはどこにあるのか?
東アジアの治安維持効果は在日米軍によって発揮されているものの、米軍普天間基地の騒音・○○に関する地域住民の負担、ひいては沖縄県の○○に関する負担が日本の他地域に比べて大きい(○○はたくさんありそうなので省略)。
ステップ5 [推察] そのギャップは何によって生じているのか?
……ここがよく見えていない。本来は[分析]の結果として特定されたギャップについて、その原因を考える。
ステップ6 [課題] 目標達成のために乗り越えるべき壁は何か?
……ここもよく見えていない。普通であれば、[推察]の結果突き止められた原因を解消することが解決すべき[課題]として据えられる。
ステップ7 [選択肢] 課題解決のために何ができ得るか?どれを選ぶか?
基地をどのように分散させるか?(←いきなりココの話が出てきたように思える)
ステップ8 [実行] どうやるか?
現地に行ってお願いする(?)
ステップ9 [学習] 何を学んだか?
なにを学んだのか?
こんな感じでしょうか。自分の不勉強もかなり露呈したものの、こうやって整理してみると、そもそもステップ1[将来像]に関して首相がなんと言っていたか、残念ながら思い出すことができません。解くべき課題が明らかでないまま、特定の選択肢(県外・国外移設)を約束してしまったことが、問題解決者としてはまずかったように思えます。