「観察」の効用
経営の世界には「測定できないものは改善できない」という格言があります。
ただ悪いというだけでなく、客観的な評価の物差しを決め、悪さを測定する(「見える化」する)ことで、組織的な改善が可能になります。
では、何を「見える化」すべきかをどうやって知るのか。
「観察」によって、です。
下記は、2006年のサッカーW杯直前。対戦相手の情報収集を行っていた、日本サッカー協会技術委員 田嶋幸三氏の発言です。
「我々が重視しているのは相手選手のオフ・ザ・ボールの動き方。ボールを持っているときのフェイントなどではなく、ボールを持っていないときにどう動いているのかに力点を置いている」
「また、この選手が何本のパスを通したという客観的な情報を無視するわけではないが、大切なのは主観を伴った分析だと思う。パスが通る確率は低くても、それは非常に厳しいところ、守る方にとって危険なところばかりを狙っているからかもしれない。成功率は低いが、この選手は狙いどころがいいという情報が現場には役立つ」
(2006/05/23 日本経済新聞 朝刊)
もしパスの本数でなく「質」が勝敗を左右することが明らかになったなら、遠からずパスの「質」を何とかして評価・測定・改善する方法が開発されるでしょう。
しかし、実戦で勝ちたいチームはそれを待っていられませんし、簡単に「見える化」できない情報だからこそ、ライバルとの差別化要因になり得るとも言えます。
経営であれスポーツであれ、
結果を客観的に評価するための「見える化」と、
予兆を探る「観察」は常にセットでなければなりません。
ワークライフバランスを推進するための「観察」
今日、平成18年版厚生労働白書が発表されました。キーワードのひとつは「ワークライフバランス」。本文を検索してみると、13回もこの言葉が登場します。そしてワークライフバランスを損なう原因として、長時間労働が指摘されています。長時間労働が社会の諸問題の原因のひとつであることが「見える化」されつつある、ということでしょう。
これはパク・ジョアン・スックチャさん(『会社人間が会社をつぶす―ワーク・ライフ・バランスの提案』)が4年越しでなさっていた主張であり、喜ばしいことです。
しかしこれは最初の一歩。労働のスタイルというのは個人(+家庭)・組織・国の論理と価値観のぶつかり合いの中で生成されますから、このボタンさえ押せば労働時間が減り、出生率が上がり、…という解はありません。
そして実のところ、誰かが自分の問題を「見える化」してくれるまで、ただ待っているわけにはいきません。
我々は毎日を生きており、人生の残り時間は減っており、
子供は日に日に成長しているのですから。
まずは自分の「観察」から。
なぜ望んだようなバランスで暮らしていないのか。
それは自分でない他の誰かのせいなのか。
起-動線には、パクさんに許可をいただいて作成した、「ライフ・バランス・チェッカー」というツールがあります。3分ほどで終わりますので試してみませんか。