X社では管理職のスキルアップについて会議が開かれています。司会のFさんが「わが社の管理職に足りないスキルは何か?」とホワイトボードに書いたところで、さっそくAさんが口火を切ってくれました。
A 「まあ、ウチはオーナー企業だからね」
F 「……?」
何を言っているのか、主張と根拠を理解する
Fさん、まずは主語と述語のある文として理解を図ります。
F 「オーナー企業だから……」
A 「軍隊式というのかな」
F 「上から下への一方通行?」
A 「というか~」
そんなやりとりを経て、Aさんは「わが社の管理職は、自ら業務改善を提案するような自発性が低い」と言いたいのだと理解できました。
「低い」という判断(主張)にいたった理由(根拠)も理解しておく必要があるでしょう。何を基準に、どんな言動をもとに、そう感じたのか。FさんはAさんからさらなる発言を引き出しました。皆も納得したようです。
ちなみにFさん、「オーナー企業云々は、自発性が低い理由の根っこにあるだろう。でも変えられない前提について論じるのは後回しにしよう」と思い、その部分はそっとスルーしています。
何について言っているのか、意見が答えている問いを理解する
Aさんの意見が理解できたところで、Fさんはホワイトボードに皆の注意を促します。
F 「管理職に足りないスキルは何か? …… 自発性ってスキルかな」
B 「スキルというよりマインドの話だよね」
Aさんの意見は問いに答えていなかったわけですが、この場合は問いのほうが必要以上に狭かったようです。Fさんはホワイトボードの問いを書き直しました。
F 「管理職に足りない“もの”は何か? でいいか」
何のために言っているのか、発言者の欲求を理解する
実のところ、最初に理解を試みるべきは、「何を言っているのか」でも「何について言っているのか」でもなく「何のために言っているのか」です。
なぜ、Aさんは真っ先に「オーナー企業だから……(管理職の自発性が低い)」と発言したのか。さまざまな理由があり得ます。
- 管理職の自発性が低いと思っていた
- 単に場を活性化しようと思った
- 同席している上司に何かをアピールしたかった
- オーナー企業であることに関して、何か言いたいことが他にあった
Fさんが発言の目的をどうつかむかによって、発言にどう反応するかが変わってきます。たとえば、単に場を活性化しようという意図だったなら、内容の不足(根拠がない)とか、論点のずれ(スキルを問うたのにマインドの話をしている)を指摘しても詮ないことで、むしろ口火を切ってくれたことに感謝すべきでしょう。
意見・論点・目的
ここまでの話は、『ファシリテーションの教科書』という本で見つけた一文からふくらませました。
ファシリテーターが参加者の発言を聴く際には、「何のために(目的)」「何について(論点)」「何を(意見・主張・結論と根拠・理由)」言っているのかをつかむことが必要です。
人の話をしっかり理解したいときに思い出したい三つ組なので、言葉を少し足してリスト化しておきました。
- 【意見】 何を言っているのか、主張と根拠を理解する
- 【論点】 何について言っているのか、意見が答えている問いを理解する
- 【目的】 何のために言っているのか、発言者の欲求を理解する
相手の発言を理解する3つの「何」 – *ListFreak
〈参考〉