以前務めていたコンサルティング企業から、社内勉強会のファシリテーターを依頼されました。テーマは自由とのこと。現役の後輩諸君と自分との違いといえば、やはり組織で仕事をしているか独りでやっているかです。そこで「独りで生きていく」というテーマであれこれ話し合ってみることにしました。
事前にこんなショートケースを送り、アイディアを考えてきてもらいました。
「会社が突然なくなった。しかし、切りつめれば24ヶ月は生活できるだけの蓄えがある。そこで、12〜18ヶ月限定で、本当に興味を持てるテーマを選んで事業を興そうと考えた。もしうまくいかなくても、後半の6〜12ヶ月間就職活動をすればなんとかなるだろう。さて、何をするか?」
実はこれ、ちょうど10年前のわたし自身にかなり近い状況設定です。10年と1ヶ月前に参画していたベンチャー企業が事業清算となり、10年前のいまごろは、まさにこのサイトを含む事業プランをせっせと考えていた時期でした。
さすがというべきか、常日頃から温めていたらしいアイディアが披露されていきます。うまくいきそうなアイディアはどれだったか、応援したくなるアイディアはどれだったか、などと聞きながら、独立事業者になるかどうかは別にして「人ひとり社会で生きていくために本当に必要なものは何か?」というところに話を収斂させていきました。
全員がうなずいたのは、誰かから「信頼」という言葉が発せられたときでした。そこに誘導しようと思っていたわけではありませんが、わたしも、あえて一つというならば、信頼だろうと考えていました。
勉強会はそこで終わりました。しかし、個人的に話し合ってみたかった・考えてみたかったのはそこからです。信頼とは何か。信頼は何から生まれるのか。
そんなことがあったせいか、最近目を通した『組織行動のマネジメント』で、『最近の研究により、信頼という概念の根底にある次の五つの側面が特定化された。』という言葉が目に飛び込んできました。とはいえ訳出された「五つの側面」にピンと来なかったので、引用元から訳し直した文をお目にかけます。これは職場における相互の信頼関係の要素であることに留意してください。
- 【真摯さ】 正直さと誠実さ
- 【能力】 技術的知識、対人関係の知識、職務遂行スキル
- 【忠誠心】 善意、喜んで人をまもり顔を立てる意志
- 【一貫性】 頼りがい、確実さ、状況判断のよさ
- 【開放性】 近づきやすさ、喜んでアイディアや情報を共有する意志
職場における相互信頼の5要素 – *ListFreak
『チームメンバー間の信頼については、これら五側面の相対的な重要度の順序が常にほぼ一定であることがわかっている』とのこと。それは、このリスト項目の順序です。
もっとも重要とされるのは「真摯さ」(integrity)。ピーター・ドラッカーのお気に入りの言葉でもありますね。ちょうど年末ですから、今年の行動についてこのリストを使って振り返ってみようと思います。途中でイヤにならなければよいのですが……。