大きなストレスにさらされても健康を維持している人がいる。このことに興味を持った心理学者たちは、こうした人々はストレスを他の人とはちがう形でとらえているのだと考え、それを「ハーディネス(心の頑健さ)」と呼んだ。
ジェームズ・M・クーゼス、バリー・Z・ポズナー 『リーダーシップ・チャレンジ』(海と月社、2010年)
米国のある大企業が、大規模な訴訟やその結果としての企業分割といった厳しい変化にさらされました。その渦中にあった管理職を対象に、ストレスの高さと病気になる確率の関係が12年間にわたって調査されたそうです。
その結果、高いストレスを受けても病気にかかりづらかった人たちに共通する特徴が見出されました。
- コントロール(制御)力が強い 自分の行動が、ものごとの推移や結果によい影響を及ぼすと信じている。無力感に陥ったり、犠牲者のような気分になったり、受け身の態度をとったりすることは時間の無駄だと感じている。
- コミットメント(関わり合い)力が旺盛 自分の仕事に興味や重要性、価値などを見出すことができる。周囲のできごとへの関心が高く、周りの人の状況と関わることを刺激的で有意義だと感じている。否定的な態度をとったり、無力感や空虚感、退屈な思いなどにとらわれたりすることはまずない。
- チャレンジ(挑戦)力が旺盛 人間はよい経験と悪い経験の両方から学ぶことで成長し、満足感を得ると信じている。何の努力もせずに快適さや安全が手に入ると考えたり、そう望んだりすることは現実的ではなく、むしろおろかだと感じている。
ハーディネス(心の頑健さ)の3C – *ListFreak
挙げられた特徴が、ほとんど「気の持ちよう」とでもいうべき話であることに興味を持ちました。
最初の項目は「自分の行動が、ものごとの推移や結果によい影響を及ぼすと信じている」です。もちろん、実際に「ものごとの推移や結果によい影響を及ぼす問題解決能力」があれば、ストレスは軽減されると思います。しかし、会社が訴訟に巻き込まれたり分割させられたりといった大きな環境変化のなかでは、個人がものごとの推移に影響を及ぼすような力を発揮することは難しいでしょう。
そんなときでも無力感に陥らず、自分は未来をコントロールできると信じられるだろうか。そう考えてみると、心の頑健さを手に入れるのはやはり大変そうです。
お手軽なコツはないでしょうが、上記のリストを眺めていると、各項目の最後の文では、無力感・受け身の態度・何もしないことなどがハーディネスの対極にある態度のようです。あえて一言でまとめれば、「受動的にならず、とにかくもがいてみる」ことが、ハーディネスへの第一歩と言えるでしょうか。