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コンセプトノート

237. それから離れるな。しかし、それを続けるな。

「本業を離れるな、本業を続けるな、本業の中身を変えよ」という、非常に印象的なタイトルの記事を読みました。記事といってもメルマガの中のコラムです。タイトルは、山形県の斎藤農機製作所という企業の社訓から来ています。

同社は農業機械の製造企業。創業80年の老舗です。しかし、農機に留まらず、精密板金加工、光造形と、より高度で先進的な加工技術を必要とする分野にも進出しています。季節変動性の高い農機事業を補完するとともに、ある事業で得たノウハウを他事業に生かしているとのことでした。

◆どの企業にとっても基本となる本業があってこそだ。本業が栄えていなければ、存続しないし、長く続いている企業には社会に役立っている業がある。とはいえ本業に安住は禁物だ。本業と思い込んでいるのは、当の企業だけで、当の企業が本業と誇る業が、厳しく時代や社会、市場によって鍛錬され、自らも絶えまず磨くことを怠ると、何百年続いた企業も明日がない。慢心から本業を自ら崩壊させている企業を数え上げるに枚挙のいとまが無い。
― e−中小企業庁&ネットワーク推進協議会、「e−中小企業ネットマガジン(11/14号)」、2007年

斎藤農機製作所は自ら本業の中身を変えていますが、仕方なくそうせざるを得ないケースもあります。

神奈川県鎌倉市の後藤家は、代々仏師でありました。しかし明治時代の廃仏毀釈運動で、多くの仏像が壊され、それを作る仕事も失われます。仏師はしかたなく「彫る」スキルが活かせる工芸品(鎌倉彫)の製作に転じました。これは、博古堂という鎌倉彫では有名な老舗の話です。後藤家は、望まなかったにせよ、「仏師を離れず、仏師を続けず、仏師の中身を変えた」ことになります。

こういった大きなチェンジの話は、以前は数世代に一度のことであったかもしれません。でも現在は、一人の人生の中で何回もそういうチェンジ(ときにはピンチ)があります。

セールスパーソンであれば、得意としてきた商材がいきなり時代遅れになる。エンジニアであれば、専門にしてきた技術が代替技術にとって替わられる。いつ起きるかは分かりませんが、社会人人生のうちにそれが何回か起きることは、覚悟しておくべきでしょう。

不意打ちを食らうくらいならば、いっそ自分から仕掛けていってもいいわけです。でもどこにどうやって?それを考えさせてくれるのが、この言葉。

「本業を離れるな、本業を続けるな、本業の中身を変えよ」。