中学校時代の話。部活の顧問の先生がいわゆる体育会系で、今から考えると珍妙なしきたりや罰をたくさん食らいました。
ある日、「今日から毎日練習後にこれを唱える」といって渡されたのが「海軍五省」。
海軍五省
一、至誠に悖(もと)るなかりしか(誠意に欠けた事はなかったか)
一、言行に恥づるなかりしか(恥ずかしい言動はなかったか)
一、気力に缺くるなかりしか(意気込みは充分だったか)
一、努力に憾(うら)みなかりしか(最善を尽くしたか)
一、不精に亘るなかりしか(怠けなかったか―を己に問え)
(「海軍兵学校」―ウィキペディアより)
「先生。シセイとはどういう意味ですか」
「うむ。至誠とは誠の至りである」
何のことやらさっぱりです。とにかく、運悪く部長だったわたしが毎日五省を唱え、皆が復唱するという儀式がしばらく続きました。そして顧問が代わって立ち消えになったように記憶しています。
五省の方もすっかり忘れていましたが、いま考えると、一日の終わりに自分を振り返ってみるというのはよい習慣ですね。
この五省を改めて見てみると、それが「態度」に対する振り返りであることに気がつきます。目標を達成したか、成功したか失敗したかではなく、どんな態度で事に臨んだかだけが問われているのです。
たとえ目標を見失ってしまったように感じるときであっても、毎日生活している以上、小さな選択を重ねていかなければなりません。
自分は今日起きたことにどう接したか、どう身を処したかという「態度」を振り返ってみることは、何が自分にとっての「誠」なのか、何が自分にとっての「恥ずべき言行」なのか、つまり、何が「ありたい自分」なのかを考えることにつながります。
もちろん海軍五省でなくても構いませんが、寝る前に今日1日を振り返る問いを幾つか用意しておくのもよさそうです。失敗したから今日はダメな日だった…ではありません。1日を自分の基準に照らしてよい態度で過ごせたか。振り返るべきはそのポイントです。